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鈴木啓太展「CHORD」

Keita Suzuki "CHORD"
Part I : September 9 - 30, 2006
Part II : November 25 - December 15, 2006
Opening : 6 - 8 p.m. September 9, 2006

答えは、
自分たちが生きている日々の暮らしと、その暮らしを写し出す生活環境のなかにある。

鈴木啓太

gallery.sora.では、9月9日(土)より、鈴木啓太(1979年東京生まれ)「CHORD」展を開催致します。本展は二部構成となっており、Part I(9月9日(土)から9月30日(土)まで)は立体作品による空間インスタレーションを、Part II(11月25日(土)から12月15日(金)まで))では最新の映像作品を発表致します。

鈴木啓太の作品における大きな特色は、その卓越した空間センスにある。表現手段は多岐に渡り、作品は常に空間を意識された形で発表されてきた。例えば、カッターナイフの刃を積むという単純作業により形作られる立体作品「Shadow man」(2004)、蛍光灯で照らされた椅子を空間ごと消失させようとする試み「untitled」(2004-2005)などである。

鈴木啓太は、自らの表現について「日々の生活の観察から、日常生活でふれるオブジェクトや風景を自分の経験や感情と重ね合わせビジュアル化している」と語る。このような彼の作品に対するアプローチが最も顕著に見られるのは、2005年に制作された「COLORS of the world」であろう。これは早朝の光が部屋の中を静かに満たしていく光景を描いた8分の映像作品である。映像自体は、暗闇が続く導入部から、少しずつ机上のものがその輪郭や色調を見せていき、やがて朝の訪れとともに幕を閉じるというシンプルな構成である。しかし次第に強まっていく朝の光によって、そこに在るものの形・色彩・質感といった「そのものの存在を語る上で必要な構成要素」が徐々に立ち現れていく様は、静謐ながら強い印象を残す。

なにかが「出現」していく変化を観察する映像作品とは対照的に、「消失」の瞬間を奇妙なリアリティの中に表出させる空間インスタレーションもこれまでに発表してきた。Part Iで展示する新作は、白・グレー・黒のペンキを丹念に塗り込めることで「そのものの存在を語る上で必要な構成要素」が逆に剥ぎ取られた姿を提示する。さらに作品と対峙していくうちに、やがて日常世界の構成要素までもが剥ぎ取られていくような錯覚に陥っていく。その研ぎ澄まされた感覚から生み出される世界は、かつて見たことのない日常に潜む未知の瞬間とイマジネーションの力に溢れている。