EXHIBITIONS
山谷佑介 「ONSEN」
会期: 2024年11月15日(金) – 12月14日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー / フィルム
オープニング・レセプション: 11⽉15⽇(⾦)18:00 ‒ 20:00
タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー / フィルムでは、山谷佑介「ONSEN」展を開催いたします。タカ・イシイギャラリーで初めての個展となる本展では、山谷がそのキャリアの中で最も長く継続している「ONSEN」の作品群を新たな編成で発表いたします。
自分のSNSで野湯探しの同行者を募ると毎回何人か連絡をくれる。……面識のない人たち同士の、半ば強制的なコミュニケーションが始まる。自分を知ってもらう為の自己紹介、振る舞い方。たわいもない話を繰り広げていく中での、相手を知るための質問と若干の駆け引き。探検が始まる高揚感と非日常への期待感。そして共通の目的を持った連帯感。そこで生まれるグルーヴは、時代や場所を超えて、《それはかつてあった》風景を呼び起こしてくれる。
2024年 山谷佑介
「ONSEN」は約15年前から山谷の個人的な趣味として始まった野湯探しをテーマとしたシリーズです。野湯(のゆ、やとう)とは、自然の中に自噴する人工的な整備が施されていない温泉であり、そこでは火山ガスや温泉成分の影響で草木が生えず、岩場が顕にされた荒涼とした景色が広がります。「まるであの世とこの世が交差するような、剥き出しの風景」に心を奪われたと山谷は言います。火山大国である日本において、その恵みである温泉は人々の娯楽となっており、山谷の撮る剥き出しの風景の中に見る人間の肌は、脆く傷つきやすい不確かなものであり、 自然と人間の関係性へと私たちの意識を立ち返らせます。そしてまた温泉文化の歴史は古く、『日本書紀』や『万葉集』の中で、男女が一緒に飲食し、歌を交わして親睦を深める場として記述されています。友人や家族を連れ立って野湯を探す中で、山谷の興味は自然が作り出す圧倒的な造形美を写真に収めるだけにとどまらず、人間と人間のプリミティブな関係性を問い直す視点へと広がっていきました。SNSで同行者を募り、偶発的に集まった見知らぬもの同士の旅は、いつの時代も変わらない人間の営みの記憶を喚起させることとなりました。作品の中にハプニング的要素を取り入れて他者を介在させる手法は、写真撮影とドラムパフォーマンスが融合した『Doors』など、近年の山谷作品の特徴といえます。
本展では、本シリーズの新たな試みとして、ルーメンプリント作品を展示します。山谷は野湯探しの道中に同行者の間で交わされた「たわいのない会話」を録音しており、その言葉を、日本、アメリカ、中国、フランス、インド、ロシアなど世界各地から収集した、様々な時代の印画紙に焼き付けました。有効期限を過ぎ長らく眠り続けた印画紙は、それぞれの場所で保管されていた状態により、カビや感光ムラ、薬品の違いにより様々な表情を見せます。山谷はこれらの紙の上で起きている時の流れを通して、時代や場所を超えた人間の普遍的な言葉を浮かび上がらせるのです。
本展の開催に合わせ、作品集『ONSEN MMXXIV』が刊行されます。
【新刊情報】
山谷佑介『ONSEN MMXXIV』
flotsam books刊
2024年11月発売
3,850円(税込)
148 × 220mm 320頁
図版216点
野湯同行者たちとの会話テキスト102頁(日本語)
山谷佑介は1985年新潟県生まれ、立正大学文学部哲学科卒業後、外苑スタジオに勤務し、その後移住した長崎で出会った東松照明や無名の写真家たちとの交流を通して写真を学び、作家としての活動を開始。現在は東京を拠点に活動。主な展示には「KYOTOGRAPHIE」(2015年)、「東京国際写真祭」(2015年)、個展「KAIKOO」 (Yuka Tsuruno Gallery、2021年)、「VOCA展 2021」(上野の森美術館、2021年)、「第14回恵比寿映像祭」(東京都写真美術館、2022年)、個展「ONSEN」(スタジオ35分、2024年)、個展「温泉-Assemblage, Environments & Happenings-」(空蓮房、2024年)を初め、ニューヨークのコンデナスト本社ビルでの展示など、国内外で作品を発表。主な作品集に『Tsugi no yoru e』(私家版、2013年)、『ground』(lemon books、2014年)、『RAMA LAMA DING DONG』(私家版、2015年)、『Into the Light』(T&M Projects、 2017年)、 『Doors』(ギャラリー山谷、2020年)、『ONSEN I』(flotsam books、2023年)がある。