EXHIBITIONS

エイミー・アドラー 「A Safe Place」

会期: 2022年10月29日(土) – 11月26日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー ビューイングルーム(TERRADA ART COMPLEX II)

安心して作品をご覧いただけるよう様々な感染症対策を徹底しております。

タカ・イシイギャラリーは10月29日(土)から11月26日(土)まで、ロサンゼルスを拠点とするアーティスト、エイミー・アドラーの新作展「A Safe Place」を開催いたします。本展は、アドラーの当画廊での5度目の個展となります。

アドラーはこれまで一貫して、ドローイングの物理的なプロセスとその潜在的な物語性との関係を探求してきました。最新作となる「A Safe Place」では、その探求がさらに深められています。黒い紙にパステルチョークで描かれた9点のドローイングからなるこのシリーズには、Tシャツとショートパンツ、スニーカーを身につけた金髪の子どもが、葉の茂る大木によじ登る様子が描出されています。枝にぶらさがったり、体を揺らしたり、太い幹の周りを軽やかに動き回る子どもの様子が、角度や高さを異にした9点のイメージに展開されています。若い主人公の躍動感と静止した木とは好対照をなしていますが、それはまた、静的な表面性と動的な描画の行為という、ドローイングがもつ相互関係を写し出すものでもあります。

アドラーの作品の特徴である張りつめた物語性は、いくつもの重要な要素によって生み出されていますが、上記の点もそのひとつと言えるでしょう。写真や映像、活字媒体などの視覚言語を用いて、アドラーは多層的な物語のなかに存在するイメージを創り出し、それらによって、観るものをなんらかの意味が生まれる瞬間に立ち会わせようとします。過去の作品の多くがそうであるように、「A Safe Place」でも、一見わかりやすく感じられるものが、プロットや主題を明確にすることを一切拒むアドラーによってすぐさま曖昧にされてしまいます。子どもは中性的で、その顔が明かされることはなく、1980年代とも現在ともとれる服装をしています。各々のイメージは注意深くトリミングされ、場所を特定することもできません。タイトルもこの終わりのない、解釈的な雰囲気を助長するばかりか、「safe=安全」という概念、またそれが意味する何かをさらに複雑にしています。

アドラーは長年にわたって、黒い紙から描き出すドローイング作品を制作してきました。身体的にも精神的にも多くの労力を注ぎながら、暗影からイメージを浮かび上がらせるのです。「A Safe Place」では、9点を同時に仕上げていく手法がとられました。9点すべてにおいて、ひとつのレイヤーを描き終えてからつぎのレイヤーへと取りかかる、という方法です。そうしてできあがったドローイングには、生き生きとした独自の世界が創出しています。そこはアドラーが居住する場所であり、彼女が多角的な視点から編み出した、見覚えのある、しかし完全に不可知の視覚的物語が息づく空間にほかなりません。

エイミー・アドラーは1989年にクーパー・ユニオンを卒業後、1995年カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の視覚芸術課程修士号、2011年に南カリフォルニア大学(USC)の映像芸術課程修士号を取得。近年の主な個展に、ロサンゼルス現代美術館(1998年)、ハマー美術館(ロサンゼルス、2002年)、アスペン美術館(2006年)、サンディエゴ現代美術館(2006年)、Drammens Museum(ドランメン、2012年)など。短編映像作品はFramelineやOutfest(いずれも2016年)、英国映画協会主催のFlare(2017年)にて上映。アドラーの作品はDrammens Museum(ドランメン)、ハマー美術館(ロサンゼルス)、ロサンゼルス現代美術館、サンディエゴ現代美術館などに収蔵されている。2021年にグッゲンハイム・フェローを受賞、現在カリフォルニア大学サンディエゴ校にて視覚芸術過程の教授を務める。

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