EXHIBITIONS
「隠喩としての宇宙」展
会期:2012年7月20日(金) – 9月1日(土)[夏季休廊:8月12日 – 27日]
オープニング・レセプション:2012年7月20日(金)18:00 – 20:00
タカ・イシイギャラリー京都とホテル アンテルーム 京都は、2012年7月20日(金)から9月1日(土)まで、「隠喩としての宇宙」展を開催致します。本展はゲスト・キュレーターとして、椿玲子氏(森美術館アソシエイト・キュレーター)を迎え、2つの会場にて「隠喩としての宇宙」というテーマで、計12名の若手アーティストたちの作品を展示致します。
出品作家:
【第一会場】タカ・イシイギャラリー京都
木村友紀、土屋信子、ビョーン・ダーレム(Björn Dahlem)、平田晃久、前田征紀、矢津吉隆
【第二会場】 ホテル アンテルーム 京都
磯谷博史、梅沢和木、大舩真言、土屋信子、名和晃平、宮永亮、矢津吉隆、山下耕平
企画: 椿 玲子(森美術館アソシエイト・キュレーター)
会場:
【第一会場】タカ・イシイギャラリー京都(担当:安丸)
http://www.takaishiigallery.com
〒600-8325 京都市下京区西側町483番地(西洞院通 / 新花屋町通 西南角)
TEL: 075-353-9807 e-mail: kyoto@takaishiigallery.com
営業時間:11:00 – 19:00 定休日:日・月・祝祭日
【第二会場】ホテル アンテルーム 京都(担当:上田)
http://hotel-anteroom.com
〒601-8044 京都市南区東九条明田町7番
TEL: 075-681-5656 e-mail: info@hotel-anteroom.com
営業時間:12:00 – 19:00 無休
磯谷博史 1978年東京生まれ。ものの関係や法則、存在の軌跡、日常的な物語などを概念的に扱いつつも、造形的なインスタレーションを制作する。出展作《Diffused Reflection of Reading》のクレーターは光を受けては様々な方向へと送り返し、時間の流れと解釈を乱反射させる装置となる。
梅沢和木 1985年埼玉生まれ。WEB世界に散らばるキャラクターという現象を俯瞰し、そこにある何ものかの存在や、把握するのも不可能な情報量に対峙する時の感覚を、多次元的な重層性、カオス的なパワーで表現する。3.11以降、地面が画面に現れるなど作風に変化が見られる中、本展では新作を展示する。
大舩真言 1977年大阪生まれ。和紙に岩絵具で描かれた作品は、絵画というよりも、人間より遥かに長い年月、正に宇宙的な時間を経てきた様々な鉱物の粒子 ― 記憶が重積する表面として存在し、観る人が自らを投影するための多次元的空間となる。
木村友紀 1971年京都生まれ。記憶やイメージ、ものの関係性、法則、見えない空間の存在などを提示し、時には再構成してみせる。今回は既存の2脚の椅子を並べ《eleven》と題し、存在と認識または記憶をテーマにした立体作品を展示している。
土屋信子 横浜生まれ。日常にある素材や廃棄物をもとに、ユニークな題名、物語と造形を持つ、オブジェからインスタレーションまでの作品群を作り出す。それらは私たちの文明とは明らかに違う別種の文明や神話、あるいは日常に潜むもう一つの時間軸 ― 時空間の可能性を提示する。
名和晃平 1975年大阪生まれ。時や記憶を内包するオブジェや空間、あるいはネットを通じたコミュニケーションそのものの表面をクールに表現することで、時空の層の視覚化を試みている。《Swell》は、モチーフを回転させながら発泡ウレタンで覆った作品で、地上の垂直な重力方向を逸脱したものである。
ビョーン・ダーレム 1974年ミュンヘン生まれ。キリスト教、錬金術からNASAやCERN(欧州原子核研究機構)の研究対象である最先端宇宙物理までを同じ地平で扱い、小型オブジェから大型インスタレーションまで多様なスケールで表現する。それらは宇宙的現象を表象しており、文明と宇宙の関係を再考させる。
平田晃久 1971年大阪生まれ。建築を有機的な生命のフォルム生成の延長上で捉えると共に、ライプニッツ的な「同時存在の秩序」としての空間をも扱っている。アミノ酸の構造にインスピレーションを得た《Flame frame》の形態は地球上の垂直な重力から解放された建築のあり方を示唆するようでもある。
前田征紀 1971年日本生まれ。シャーマニズム、アニミズムといった神秘思想からシュタイナー神智学までを、自身の経験に基づいたイメージを通じ、立体、写真、映像、照明、光の波長、音響などを用いたインスタレーションとして発表する。作品は、「光」との出会い、「光」が蓄積される神的空間を現出させる試みだと言える。
宮永亮 1985年北海道生まれ。映像の中に様々な時間/記憶/場所/物語のレイヤーを重ねる作風を持ち、そこでは時間や光の捩れ、すなわち重力の捩れが起きている。多次元的な時空、宇宙的な空間としての作品に観者の視点が加わることでさらなる物語の編集が行われる。
矢津吉隆 1980年大阪生まれ。科学が神話や哲学から切り離されて発展してきた中で、人間の世界観の中から失われた「見えないけど存在する何か」をテーマに多様な手法で制作している。すなわち作品制作は、祈りや祀りと同様に人間の認識の外に広がる時空、宇宙を覗くための儀式なのである。
山下耕平 1983年茨城生まれ。遠近の距離感、ミクロ・マクロのスケールを基に現在位置を測り、世界認識の方法を再検証することをテーマとしてきた。登山や宇宙への旅といった冒険、越境をテーマにカラフルな作品群を制作してきたが、最近では望遠鏡を用いたインスタレーションを行っている。
「隠喩としての宇宙」
3.11の東日本大震災と、それによって明らかになった原発問題は、日本 ― 特に第二次世界大戦以降 ― の再定義と同時に、人間と自然、文明と自然の関係についての再検証を必要としているようです。地球規模でも、異常気象、環境問題、エネルギー問題、宗教や政治・経済による紛争、金融システムと資本主義グローバル経済の危機など様々な問題が尽きない現代、宇宙における地球という星のあり方、さらには宇宙自体について考える事が求められているのではないでしょうか。
第二次世界大戦後、1975年の米ソ共同によるアポロ・ソユーズテスト計画まで、宇宙の開発ブームは冷戦構造を反映しており、冷戦後も純粋な研究ではありながらも、同時にある種の国力を競い合うテリトリーになっているのは事実です。しかし、地政学テリトリー上での考察は、そのテリトリー自体を超えることができない故に、新しい観点をもたらすことはできません。それ故に本展では、地政学的な見地による開発対象としての宇宙ではなく、今は存在しない何億光年先にある星の残像を星として認識している事実を始め、多次元的な空間、ブラックホールやエネルギーの爆発、カオスを孕んだ時空間としての宇宙、すなわち「隠喩としての宇宙」に焦点を当てることで地政学的視点の無化を試みます。
一方で交通環境と遠隔通信技術の発達と大衆化、特に1990年以降のWEB環境によるコミュニケーションの変化は、「私」というアイデンティティのユビキタス化を高め、時空間の認識とイメージを介しての現実と虚構、存在と不在の関係性は明らかに変容したと言えます。ニュートン的な絶対空間に対し、ライプニッツは「同時存在の秩序=空間」と考えたそうですが、正に今や私たちの存在と空間認識はある意味では「同時存在の秩序」であるネットワーク上に存在しています。さらに「隠喩としての宇宙」でもあるネットワークの緊密化、発達とカオス化、飽和状態に伴う爆発による断片化は、そのまま私たちの存在へと還ってくるようですらあります。
こうして物理的な空間を越えた関係性・気配・記憶といったもの、多次元的時空がWEB空間の出現によってより顕在化し、神的なものが現実の中に自然に入って来るような状況が見受けられます。そうした状況下、宇宙空間といった簡単には行けない場所、科学的な情報や映像を通してしか知ることのできなかった時空がイメージとしては身近なものになっているようです。
本展では、多次元的でマジックの存在する時空、未踏の文明や別種の神話といった「隠喩としての宇宙」をテーマに、作家達が既存のシステムや文明のあり方に問いかけを行うことで、もう一つのシステムや世界観の可能性を提示してくれるでしょう。
椿 玲子(森美術館アソシエイト・キュレーター)
本展の開催にあたり、下記のギャラリーの皆様にご協力をいただきました。
【第一会場】
hiromiyoshiiroppongi, SCAI THE BATHHOUSE,
Takuro Someya Contemporary Art / TSCA
【第二会場】
AOYAMA|MEGURO, CASHI, Kodama Gallery,
neutron, SANDWICH, SCAI THE BATHHOUSE,
Takuro Someya Contemporary Art / TSCA, TEZUKAYAMA GALLERY
(第二会場 企画コーディネート:染谷卓郎 Takuro Someya Contemporary Art / TSCA)