EXHIBITIONS

ジャデ・ファドジュティミ「Our Inner Tide」

会期: 2025年12月20日(土) – 2026年1月31日(土)
[冬季休廊: 2025年12月27日(土) – 2026年1月6日(火)]
会場: タカ・イシイギャラリー 六本木&京橋(同時開催)
オープニング・レセプション: 12月20日(土)17:00 ‒ 19:00(京橋)

タカ・イシイギャラリーは、12月20日(土)から1月31日(土)まで、ジャデ・ファドジュティミの個展を六本木および京橋の両ギャラリーにて同時開催いたします。ファドジュティミはこの秋、制作拠点を東京へと移しました。タカ・イシイギャラリーでの3回目の個展となる本展では、彼女に大きな影響を与え続けている日本で描かれた大型ペインティング作品群に加え、初公開となるサウンドスケープ・インスタレーション作品を発表いたします。

ファドジュティミの絵画の大きな特徴は、躍動的な筆致で描かれる豊かで印象的な色彩にあります。流れるようなストロークで油絵具を幾重にも重ねることで、色とかたちが動的に融合する一方、塗り重ねた絵具を拭き取ることで、隠れていた色の層を露わにします。湿り気を帯びたこれらの表面の上に、素早く繊細なオイルパステルやオイルバーの線が加えられることで、作品にさらなるエネルギーとリズムが吹き込まれます。

ファドジュティミは敏感に揺れ動く自身の情動や感情を色彩へと変換し、キャンバスへと託します。彼女の関心は、言語体系に依拠する社会にほころびを生じさせる抽象的な世界や、記憶や感情、そして時間を通じた自己の連続性などによって形成される、アイデンティティの領域に向けられています。その探訪を支える重要な媒介が音楽、特にサウンドトラックであり、制作の場に流れる旋律は、過去の情動的な経験の記憶を呼び覚まし、現在の感覚と重なり合うことで、自身のアイデンティティをめぐる問いをさらに深めていきます。彼女は過去と現在の経験と、そこから立ち上がる問いとを対話させ、その微細な揺らぎを丁寧に受け止めながら絵筆を進めていきます。完成したペインティングは、こうした思考体系に呼応する形であらわれ、刻々と変化する応答の無数の瞬間を鋭敏にすくい上げるとともに、作家自身の断片を映し出しています。

過去と現在を往還する思考の波間にあって、拠りどころ──見慣れていながらも見知らぬ場所──となるのが描くという行為そのものであり、キャンバスに自身の内的世界を一時的にとどめ、観者へと開くための確かな支点をそこに見出しています。自己を形成する私たちの日常的な経験に寄り添い、ときに問いを投げかける作品タイトルもまた、それぞれの作品を観者にとっての居場所となるよう導いています。

今回京橋ギャラリーでは、ファドジュティミにとって初めての試みとなる3点のサウンドスケープ作品で構成されたインスタレーション「The Texture of Reality Has Begun to Shift」を初披露します。絵筆の代わりに彼女自身とサウンドデザイナー/オーディオプロデューサーのテイラー・ヒルトンの歌声を用いた実験的なこの作品の構造は、ペインティング作品と驚くほど呼応しています。色の層を幾重にも重ねる代わりに異なる声色や呼吸、響きが時間の中で積層し、形はメロディーによって描かれます。まるで心地よい色彩の連なりのような和音は我々の心象風景に直接訴えかけ、オイルパステルやオイルバーの素早く力強い線に相当する高音や低音が、緊張や解放の瞬間をアクセントとして刻んでいきます。

サウンドスケープ作品とはすなわち、絵画を介さずに響く色彩の周波数といえます。視覚と聴覚が交差する領域で、ファドジュティミは「描くこと」の本質を再構築し、内的世界の振動をより多層的なかたちで開示します。サウンドスケープ作品に色彩の揺らぎを「見る」私たちは、ペインティング作品に自己の記憶や感情の連なりに触れる旋律を「聴き」ます。そのとき、絵画は日々を生きる私たちに寄り添うサウンドトラックとなるのかもしれません。

ジャデ・ファドジュティミは1993年ロンドン生まれ。現在東京とロンドンを拠点に活動。スレード美術学校(ロンドン)で絵画を学んだ後、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(ロンドン)にて修士課程修了。近年の主な個展として、The Hepworth Wakefield(ウェイクフィールド、2022年)、ICAマイアミ(2021年)、PEER UK(ロンドン、2019年)など、主なグループ展として「In Our Time: Selections from the Singer Collection」the Scottsdale Museum of Contemporary Art(スコッツデール、2022年)、「Mixing It Up: Painting Today」ヘイワード・ギャラリー(ロンドン、2021年)が挙げられる。第59回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2022年)、リバプール・ビエンナーレ(2021年)などの国際展に参加しており、アルベルティーナ(ウィーン)、ハーシュホーン博物館(ワシントンD.C.)、The Hepworth Wakefield(ウェイクフィールド)、ICA マイアミ、ロサンゼルス・カウンティ美術館、メトロポリタン美術館(ニューヨーク)、パリ市立近代美術館、アムステルダム市立近代美術館、テート・モダン(ロンドン)、ウォーカー・アート・センター(ミネアポリス)などが作品を収蔵。

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