EXHIBITIONS
森山大道 / セイヤー・ゴメス 「Hellooooo」
キュレーション:マット・ブラック
会期: 2025年4月12日(土) – 5月31日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー京橋、天王洲
オープニング・レセプション: 4月12日(土)17:00 – 19:00
会場: タカ・イシイギャラリー京橋
タカ・イシイギャラリーは森山大道 / セイヤー・ゴメスによる「Hellooooo」を開催いたします。本展は、アメリカのアーティスト、セイヤー・ゴメスによる絵画・彫刻と、森山大道の写真との対話という形式をとります。両者はともに、ロサンゼルスと東京というそれぞれの都市の根本にあるものを探りました。それらは、彼らの仕事に深く根付くとともに、それぞれにすぐにそれと分かる明確な視覚的言語によって表現されています。
セイヤー・ゴメスは、そのフォトリアリズム・ペインティングによって認められるようになりました。それは、膨張する都市の断片にフォーカスするものであり、ロサンゼルスの風景にほかなりません。ゴメスの仕事は、歴史、記憶、真実性という概念、そして私たちが住む環境においてものを見たり理解したりする仕方に疑問を投げかけるものです。エアブラシ、ステンシル、トロンプルイユといったハイパーリアリズムの技術や工程を用いたり、ハリウッドの映画背景制作の技術を暗示したりすることで、ゴメスの絵画は、ドキュメンタリー的であると同時に半フィクション的な都市の表現として機能しています。その描写は、ロサンゼルスに浸透し偏在するざらざらとした質感をむき出しにします。格子状の看板に特徴づけられる単調で廃れたストリップ・モール[1]が、ファウンド・ポエトリーの形式へと姿を変えます。例えば、”プレイ・ボーイ・ノース、エンド、ブリックヤード・ビューティー、ヴォルテックス…”といったように。ぽつんと建つ5Gセル・タワーは、すでに時代遅れの遺物として位置づけられているように見えます。また、発光するマクドナルドの看板の明るいライトは、アメリカの現代の消費社会のダークなワン・シーンを演出しています。これらは、カリフォルニアの理想のイメージではありません。これらは、記憶され、再構築され、塗り替えられたイメージであり、ある神話を暗示しています。それは、実際に私たちが見ているものから作られるのではなく、私たちのものの見方から作られる神話なのです。
若いころ、大阪から東京に出てきた森山が「初めて途方にくれた街」であるという新宿を、彼は1960年代から長年撮り続けています。森山が「欲望の街」と捉える新宿は時代の変遷により表面的には変化し入れ替わっているようでありながら、その体質や本質的な部分、そこで体感できるものは変わらないのかもしれません。
彼は新宿「を」撮り物語性を創出するということはせず、新宿「で」自身の皮膚と街の皮膚が表面ですれ違うところで写真を撮っています。ポスターや電線、オートバイ、ショーウィンドーなど、街を構成するさまざまなエレメントは森山が好む対象であり繰り返し捉えられます。そういった断片的な写真が再構成されることによって森山独自の世界がつくられているといえるでしょう。新宿の「ヒリヒリ」した猥雑さに惹かれると語る森山は、街の表象、表面を写真で撮りつなぎ、その徹底した表面性の追求が特徴的です。
セイヤー・ゴメスは、1982年アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ生まれ。現在はロサンゼルスを拠点に活動。現在開催中の美術館での展覧会には、「Ordinary People: Photorealism and the Work of Art Since 1986」ロサンゼルス現代美術館、「The Living End: Painting and Other Technologies, 1970 – Present」シカゴ現代美術館、「The Life of Things」フォーリンデン美術館(ワッセナー、オランダ)、「Fresh Window: The Art of Display and Display Art」ティンゲリー美術館(バーゼル、スイス)がある。近年の個展には、「Enterprise」四方当代美術館(江蘇省、中国、2022年)、「Renaissance Collection」サンドレット・レ・レバウデンゴ財団(トリノ、イタリア、2022年)がある。ゴメスの作品は、ロサンゼルス・カウンティ美術館、ハマー美術館(ロサンゼルス)、ホイットニー美術館(ニューヨーク)、ニュー・サウス・ウェールズ美術館(シドニー)、マイアミ現代美術館、ルートヴィヒ財団近代美術館(ウィーン)など複数のパブリック・コレクションに収蔵されている。
森山大道は1938年、大阪生まれ。現在は東京を拠点としている。主な個展に「William Klein + Daido Moriyama」テート・モダン(ロンドン、2012)、「オン・ザ・ロード」国立国際美術館(大阪、2011年)、「レトロスペクティヴ 1965-2005、ハワイ/ HAWAII」東京都写真美術館(東京、2008年)、アンダルシア現代美術センター(セビリア、2007年)、Foam写真美術館(アムステルダム、2006年)、カルティエ現代美術財団(パリ、2003年)、ヴィンタートゥール美術館(2000年)、サンフランシスコ近代美術館(1999年、メトロポリタン美術館巡回)。ハッセルブラッド国際写真賞(2019年)、国際写真センター(ニューヨーク)Infinity Award功労賞(2012年)、ドイツ写真協会・文化功労賞(2004年)、日本写真協会 作家賞(2004年)、第 44 回毎日芸術賞(2003年)、日本写真批評家協会新人賞(1967年)を受賞。
マット・ブラックは、パリ生まれ、ニューヨークを拠点とするキュレーターで、展覧会、映像、コラボレーションを通して現代美術を探求するプラットフォーム「Reflections」の創設者。ブラックは、「Nowness」で映像シリーズとしてReflectionsをスタートさせ、続けてホイットニー美術館でリリースされた書籍『Reflections: Conversation with Today’s Artist』(Assouline Publishing、2016年)を出版。ブラックによる展覧会には、ラシード・ジョンソン、スターリング・ルビー、アンヘル・オテロらが参加した「Reflections」ガナ・アート・センター(ソウル、2019年)、「Open Ended」(2020年)、「Human/Nature」(2021年)があり、ヒラリー・ペシス、ジェナ・グリボン、ルドヴィク・ンコス、キャサリン・バーンハートらの作品を展示した。また、ダン・フレヴィン、セイヤー・ゴメス、アーサー・ジャファが参加した「I care because you do」The Mass(東京、2021年)、フランク・ステラとジョシュ・スパーリングの二人展「Stella/Sperling」シャルル・リヴァ・コレクション(ブリュッセル、2021年)、パット・ステアーとリーリー・キンメルを紹介した「Partly Fiction」WOAWギャラリー(香港、2022年)の他、ホセ・パルラやジャミー・ホームズといったアーティストの個展のキュレーションも手がけている。
[1] ストリップ・モール(strip mall)とは、複数の店舗が一列に連なったかたちのショッピング・センターで、北米によく見られる。