EXHIBITIONS

内藤礼 「breath」

会期: 2025年3月1日(土) – 29日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー 京橋
*同時開催
会期: 2025年2月15日(土) – 3月29日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー 六本木
オープニング・レセプション: 2⽉15⽇(土)17:00 ‒ 19:00

この度、タカ・イシイギャラリーは、2月15日(土)から3月29日(土)まで、内藤礼の個展「breath」を開催いたします。本展はタカ・イシイギャラリー 六本木から始まり、京橋へと重なり合いながら、オスロへとつながっていきます。

最初に定めた。絵を描こうとしない、作品を作ろうとしない、色彩の顕現のみを待つこと。紙に触れる瞬間が来たら、私というよりも人そのものである心と手と指が一つになるようにと願った。色彩が顕れるそのとき、私はそのことに驚き、喜びを持って見つめることができるか。それだけを心にした。

内藤礼 2023.7
ミュンヘン州立版画素描館個展図録『breath』より抜粋

本展で発表される《color beginning / breath》は、2020年、紙に絵具を置き「色彩(生)」が顕れた瞬間に心に沸き起こる純真な驚きと喜びの経験を契機とし、人間の無意識を見つめようとした《color beginning》から始まりました。同作品群は、翌年「breath」展と冠する個展(MtK Contemporary Art、京都)で発表後、2023年、作家の生へのオマージュから生まれる立体作品と絵画が一つの息吹に溶け合うように共鳴しあった同名の展覧会へと繋がっていきます(ミュンヘン州立版画素描館、ミュンヘン)。同展の制作中、「地上の光景への憧憬」は、人間の本性であるとの気づきがあり、作家は、風景を描くことを自らに許しました。2024年、「生まれておいで 生きておいで」展(東京国立博物館・銀座メゾンエルメス フォーラム、東京)で《color beginning / breath》と題された絵画は、縄文時代の土製品との出会いを通して、無意識の奥にいる「わたし」以前の人間、何億年もの間にこの世から旅立った幾多の生を投影する空間としての広がりを持ち始めます。

『内藤の変容する対話は、2点組毎に変化していく。作家は、未知の領域を探るように、創造的な決定を繰り返す。作品の日付を考えると、特定の気分を反映する図像のように思えるかもしれないが、この考えは的外れだ。なぜなら、最終的に内藤は、具体的なイメージを持っていないためだ。彼女の描く探求や抽象的なモチーフが時間とともに自然に見えるようになる一方、その本質には作家としての強い懇望がある。「ひとりの人である私が作るのではない自然の姿を、ありのままに見ることができたなら。」』(ミュンヘン州立版画素描館館長・ミヒャエル・へリング博士《color beginning/breath》に纏わるインタビューより抜粋、2024年8月)

わたしに留まり、わたしを手放す。
気づくと、わたしは個の意思と密接な形式と呼ばれるものから遠ざかろうとしていた。突き放し、逃れるように。それは無意識に近づくことだった。そうした時にだけ眼前に現われる無数の人びとを感じていた。

内藤礼 2025.1

形式に向かうことのない地点に身を置き、心、手、指、紙、絵具、水、筆が一つになる瞬間を探求するなかで、描くための媒体は移り変わり、巡っていきます。 筆、刷毛、スプーン、紙、キャンバス、フランネル、絵具チューブ、ペーパータオル、ティッシュペーパー、そして、枝。本展を機にたどり着いた枝をはじめとする新たな媒体は、人間の意思の外に広がる野生を作家の心身に目覚めさせ、作家自身と無意識に棲む無数の生を解き放ち、人間にとっての「絵画」、ひいては「人間の本性」へと作家を導きます。

本展の制作中、内藤は白い画面を「母型」空間として感じるようになったといいます。その気づきは、画面に色を置くことで、そこにある大気や光が露わになる絵画作品を支える根であり、画面では内藤の空間作品と同質の現象が生起しているように感じられます。こうして生まれた絵画は、生と死を分けられないものとする水や水路、鏡の立体の作品群と一つの空間を生成し、私たちをとりまく事物―物、人、動物、植物、大気、光―や、死者、未生の者たちが私たちの生(呼吸)と切り離せないほど親密な関係を織りなしている世界を浮き彫りにするようです。

限りなくとりどりの色彩で成り立っているこの世界で、多様な形態と次元をもち、それぞれの内と外へと行き渡る生と息吹に心を浸透させる作家による空間を、是非この機会にご高覧ください。

 

内藤礼は1961年広島県生まれ。現在東京を拠点に活動。1985年武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。1991年、佐賀町エキジビット・スペースで発表した「地上にひとつの場所を」で注目を集め、1997年には第47回ベネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館にて同作品を展示。「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」を一貫したテーマとした作品を手がけている。これまでの主な個展に「Being Called」フランクフルト近代美術館企画、カルメル会修道院(フランクフルト、1997年)、「すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」神奈川県立近代美術館 鎌倉(神奈川、2009年)、「信の感情」東京都庭園美術館(東京、2014年)、「信の感情」パリ日本文化会館(パリ、2017年)、「Two Lives」テルアビブ美術館(テルアビブ、2017年)、「明るい地上には あなたの姿が見える」水戸芸術館現代美術ギャラリー(茨城、2018年)、「うつしあう創造」」金沢21世紀美術館(石川、2020年)、「breath」ミュンヘン州立版画素描館(ミュンヘン、2023年)、「生まれておいで 生きておいで」東京国立博物館、銀座メゾンエルメス フォーラム(東京、2024年)。
パーマネント作品に、《このことを》家プロジェクト「きんざ」(香川、2001年)、《母型》豊島美術館(香川、2010年)。

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