EXHIBITIONS
竹林玲香 「You should care more about butterflies」
会期: 2024年11月24日(日) – 12月27日(金)
会場: タカ・イシイギャラリー 前橋
オープニング・レセプション: 11月24日(日)12:00 – 14:00
タカ・イシイギャラリー 前橋は11月24日(日)から12月27日(金)まで、竹林玲香の個展「You should care more about butterflies」を開催いたします。同会場にて3月に行われたグループ展に参加後、タカ・イシイギャラリーでは初めての個展となる本展では、最新のペインティング作品10点を発表いたします。
2024年の春、竹林はフィンランド西岸の港町ラウマに3ヶ月間滞在し、RaumArsのレジデンスプログラムに参加しました。中世の遺跡や伝統工芸が長年にわたって受け継がれる同地では、色彩豊かな木造建築の立ち並ぶ旧市街が世界文化遺産に登録されています。冬から初夏にかけてのフィンランドでは日照時間が延び、雪解けとともに草木が萌芽を迎えます。
フィンランドに到着した日、辺りは一面の雪で覆われていました。白樺の森や、強い日差しの下で煌めく凍った湖、自分の身長をゆうに超える岩石など、北欧特有の気候から現れた自然に出会いました。フィンランドは氷河期中、地盤全体が分厚い氷に覆われ海面下に沈んでいたと聞きました。それにより、当時と同じくらいの歳の岩石が、ほとんどそのままの形で現在も残っています。私は滞在中、凍った海の上を歩いて、岩山の頂上まで登り、何億年もかけてできた目の前の風景から、自分が生まれる前や居なくなった後のこと、ここに居ない人たちのことを思いました。この土地は今も少しずつ隆起し続けていると聞きました。時代の呟きを静かに内包し、今もどこかに向かい続ける景色を、何とか留めて形に残したいと思いました。
2024年10月 竹林玲香
身のまわりの自然が作り出す現象を取り入れる抽象画にこれまで継続して取り組んできた竹林ですが、異郷での環境や自然との共存のあり方に触れたことは、制作に対する思考を深める契機となりました。本展で新たに発表される作品群では、土地が与える固有の作用に作家が感応し、その集積が記憶の中で変成を遂げながら絵画として視覚的に再提示されることに改めて意識が向けられました。キャンバスの上では淡い色彩の層がたおやかな筆跡をもって重ねられ、そこからは色あいを刻々と変化させる空景、そよ風にゆれる植物、あるいは大地を構成する岩石の肌理などが想起されます。作品一つ一つには滞在中に訪れた場所の地名や、現地の人々との何気ない会話の一節がタイトルとして付記されていますが、作家独自の視覚言語が追求されながらもそのモチーフとの結びつきが保持され、遠く離れた風景へと私たちの想像を導きます。この機会にぜひ竹林の作品をご高覧ください。
竹林玲香は1998年大阪府生まれ、京都府在住。2020年京都造形芸術大学美術工芸学科油画コース卒業、2022年に京都市立芸術大学大学院修士課程油画専攻修了。主な個展として、「mtk+ vol.12 竹林 玲香」mtk+(京都、2022年)、「うつろいおわりがないもの」あべのハルカス近鉄本店 WALL GALLERY(大阪、2022年)、「P/P」浄土複合ウィンドーギャラリーStandAlone(京都、2020年)、「particle」gallery yolcha FLAT space(大阪、2020年)。主なグループ展に、「遠い木々が」ビーク585ギャラリー(大阪、2023年)、「MtK Satellite vol.2」MtK satellite(愛知、2023年)、「SHIBUYA STYLE vol.16」西武渋谷店 美術画廊・オルタナティブスペース(東京、2022年)など。