EXHIBITIONS
村瀬恭子 「Only Yesterdays」
会期: 2024年12月21日(土) – 2025年2月1日(土)
[冬季休廊: 2024年12月28日(土) – 2025年1月6日(月)]
会場: タカ・イシイギャラリー 六本木
オープニング・レセプション: 12⽉21⽇(土)18:00 ‒ 20:00
タカ・イシイギャラリーは12月21日(土)から2月1日(土)まで、村瀬恭子の個展「Only Yesterdays」を開催いたします。本ギャラリーで13回目の個展となる本展では、新作7点を発表いたします。
村瀬は近年単色を好んで用いており、表現の追求に焦点が当てられていることが窺えます。モノクロームの世界において色は色彩の次元を離れ、光としての価値を持つのかもしれません。また「少しずつ少しずつ布を織るようにして」描くという作家の言葉通り、這うように、流れるように、はたまた空間や存在の手がかりを追いかけるかのように画面に載せられる筆致は、作品に独特の質感を生み出しています。実体のある物(オブジェクト)も、手では掴めないもっと感覚的・知覚的なもの-風や光、音、においのような-も村瀬の絵の中では均等な意識のもとに置かれ、絵筆でそれらを紡いでいく作家の感性を私たちは見ることができるでしょう。
「昨日のこと」
毎日座る場所から毎日同じ風景。一番手前のベランダには、せっせと育てた鉢植えが並ぶ。ベランダ越しに流れる小さな川とその先の土手には色とりどりの雑草が勢いよく、春になればユキヤナギが白くなり、対岸に並ぶ桜の木々はピンクに染まる。私の視界はミルフィーユ状に重なって、昨日とはそのバランスが少しだけ変わり、夜には何もかもが消え水音だけが近くなる。
2024年11月 村瀬恭子
ここでいう「昨日」とは制作の源となる日々のことであり、生活や散歩の中で見る風景、ものごと、そして作家自身が感じることを指しています。それら日常の要素はすべて何らかの形で描くという行為へ落とし込まれ、制作に向かう気持ちの支えや導きとなるものも、常に身の回りや自分自身の中に見つけ出されます。
「…描いていくうちに画面が軽くなってくる。不安になったら耳を澄ます、頼りは河原でひっくり返した石の下、乾いた部屋の匂いとか、陰ったトンネルのその先とか。どこに居ても繋がって何度となく繰り返し現れては消えていくようなもの。」
経験の記憶は画面に留め置かれてゆきます。そうして立ち現れる世界は不確かさを抱えながら浮動しつづけ、見るものの五感に触れます。
村瀬恭子は1963年岐阜県岐阜市生まれ。1986年に愛知県立芸術大学を卒業、89年に同大大学院修了。90年から96年まで国立デュッセルドルフ芸術アカデミーに在籍。93年には、コンラッド・クラペックよりマイスター・シューラ―取得。26年間暮らしたデュッセルドルフより2016年に帰国、現在は東京を拠点に活動。主な個展に、「park」タカ・イシイギャラリー(東京、2019年)、「絵と、 vol.3 村瀬恭子」ギャラリーαM(東京、2018年)、「Fluttering far away」豊田市美術館(愛知、2010年)、「セミとミミズク」ヴァンジ彫刻庭園美術館(静岡、2007年)などが挙げられる。主なグループ展に「Body, Love, Gender」 Gana Art Center(ソウル、2023年)、「友達と – “tomodachi to”. With friends」Kunsthalle Düsseldorf (デュッセルドルフ、2021年)、「森と水と生きる」長野県立美術館(2021年)、「贅沢な対話:第3話 光は水のよう」岡崎市美術博物館(愛知、2020年)、「アイチアートクロニクル1919-2019」愛知県美術館(2019年)、「Pathos and Small Narratives : Japanese Contemporary Art」 Gana Art Center(ソウル、2011年)、「Red Hot: Asian Art Today from the Chaney Family Collection」ヒューストン美術館(2007年)、「六本木クロッシング」森美術館(東京、2004年)、「MOT アニュアル 2002 – フィクション? 絵画がひらく世界 – 」東京都現代美術館(2002年)など。