EXHIBITIONS

サイトウマコト 「トーべ・ヤンソンのドキュメンタリーを観た後で。-もりうた-」

会期: 2024年11月16日(土)- 12月14日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー 六本木
オープニング・レセプション: 11月16日(土)17:00 – 19:00

タカ・イシイギャラリーは11月16日(土)から12月14日(土)まで、サイトウマコト「トーべ・ヤンソンのドキュメンタリーを観た後で。-もりうた-」展を開催いたします。タカ・イシイギャラリーでの2回目の個展となる本展では、新作ペインティング作品約6点を展示いたします。

サイトウは、ルシアン・フロイドやフランシス・ベーコン、アントナン・アルトーなど、人間の狂気が刻み込まれた顔を主題としてコンピューター上で解体・再構成した網点状の設計図を作り、このデジタルデータに受肉させるかのようにキャンバス上に絵筆で描くポートレート作品で知られています。

本展で展示される、有機的な形状の鮮やかな色彩がキャンバス上に配された新作は、これまでの作品とは試みが大きく異なる抽象絵画です。ある日の深夜、テレビで目にしたフィンランドの画家、小説家であるトーベ・ヤンソンのドキュメンタリーと、トロールやゴブリンが登場する北欧童話を娘に繰り返し読み聞かせた懐かしい記憶に触発され、森の精霊達の誕生の様子が脳裏に浮かんだことが今回の新作へと繋がりました。

北欧の森林地帯を思わせる薄暗い背景に、高度に抽象化された色と形で描かれる多様なトロールとゴブリン達は、原始海洋において生命の起源と考えられるコアセルベート(細胞の原型であるアメーバ状の有機物の小球)のように分裂と融合を繰り返します。進化の過程で生命が獲得した、自らを成長させる代謝機能を思わせる絵の具の褶曲や亀裂は、人為を介さない峻厳な惑星の地表にも見え、そこではミクロとマクロの視点が等価に扱われています。まるで生命が誕生するかのような現象がキャンバス上に起こることに大きな興奮を覚えるとサイトウは語ります。

設計図を基に膨大な時間をかけて描かれるサイトウのこれまでの作品には、全ての制作工程に作家の緻密な意図が介在していました。対照的に今回の新作は、画面上に胚を落とし、それが自然に成長するさまを楽しむかのようです。絵の具は下地や隣接する別の色の絵の具などの与えられた環境に反応して、作家も想像しない変化をおこし、大小無数の視覚物語が紡がれます。精霊達が生まれ、蠢動する絵画を是非ご高覧ください。

サイトウマコトは1952年福岡県生まれ。東京在住。主な個展に「サイトウマコト 臨界-Criticality-」北九州市立美術館(福岡、2019年)、「サイトウマコト展:SCENE[0]」金沢21世紀美術館(石川、2008年)など。作品はヴィクトリア&アルバート美術館(ロンドン)、サンフランシスコ近代美術館、ニューヨーク近代美術館、フィラデルフィア美術館、金沢21世紀美術館、東京国立近代美術館など国内外の多くの美術館に収蔵されている。

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