EXHIBITIONS

ダン・グラハム

会期: 2024年5月28日(火) – 6月22日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー (complex665)

タカ・イシイギャラリーは5月28日(火)から6月22日(土)まで、アメリカの先駆的な作家ダン・グラハムの本ギャラリー2度目となる個展を開催いたします。グラハムはコンセプチュアル・アートの特筆すべき数々の発展のなかでも、第一線を行く作家でした。音楽や建築、人類学、占星術など広い領域を探究し、文章、パフォーマンス、建築的パビリオン、映像といった制作形式をとり人々の生活に挑発的なアイデアをもたらしました。彼の作品は広く国際的に展示されており、多くの個人や公共のコレクションに収蔵されています。

本展は、自らを「挑発者」「反逆者」と評するグラハムの長いキャリアを時系列に、複数の作品にて構成されています。本展にて展示される写真群はグラハムの写真集『Dan Graham’s New Jersey』(2012年)にも収録されています。そこで紹介される「Homes for America」(1966-67年)は、ニュージャージー州の郊外開発を撮影したシリーズ写真に、土地利用の経済や建築や職人技の衰退について描いた文章が添えられた作品です。同書籍では2006年に彼が撮影した写真も振り返ることができ、それらは展示と研究協力の機会としてコロンビア大学建築都市計画歴史保存学部(GSAPP)の教授陣やその他のゲストと行った一連の研修旅行で撮影されたものです。

1960年代、70年代、80年代そして2000年代に同じ郊外の街並みで撮影された、空間的にも時間的にも反復と差異が重層的な要素を示す2枚の写真を並置したシリーズも紹介します。1970年代から見られるようになった、2つの鏡を取り込んで主観的な領域を実践するシリーズも紹介され、ニュージャージー、建物、キッチュ、そしてアメリカに対するグラハムの変わらぬ関心が、このシリーズを通して見て取ることができます。

次の作品は、心理学と「見つめること」に対するグラハムの関心を示した模型作品「Clinic for a Suburban Site」(1978年)。グラハム曰く、パブリックとプライベートの境界、「内」と「外」の概念、そして「家族空間の伝統的な配置」についての疑問を投げかける思索的なプロジェクトです。一見典型的なアメリカ郊外の建物のファサードはガラスに置き換えられ、家の内部は鏡によってパブリックとプライベートに分けられています。そうすることで、グラハムは、建築におけるガラスの文字通りの透明性が社会の透明性にもつながるというモダニズムの理想を批判しています。この家の住人は、外の環境や活動を眺めることができると同時に、彼ら自身が展示物となるのです。このコンセプトは、グラハムが次に展開するパビリオン・シリーズにもつながっています。

グラハムの批評的関与は、1970年代後半から彼がデザインしてきたガラスと鏡張りのパビリオンに最も魅力的に現れています。パビリオン内の双方向ミラーは、予期せぬ反射と覗き見的な要素を生み出し、同時に自分自身を観察し、他者を観察することができます。パビリオンの3つの模型は、2022年に発表されたグラハムの最後の作品であり、彫刻と建築の中間に位置し、表現の道具として、心理的な拠り所として、社会変革の担い手として、そして私たちが他者と自分自身を見るプリズムとして注目されました。

ダン・グラハムは1942年イリノイ州アーバナ生まれ、ニュージャージー州ウィンフィールド・タウンシップ育ち。50年間、キャリアのほとんどをニューヨークで過ごし、2022年に他界。
グラハムの作品は、中国・北京のRed Brick Art Museum(2017年)、アメリカ・オハイオ州のクリーブランド美術館(2016年)、フランス・マルセイユのMAMO(2015年)、アメリカ・ニューヨークのメトロポリタン美術館(2014年)、オランダ・ティルブルクのデ・ポント現代美術館(2014年)に展示され、2009年にロサンゼルス現代美術館で開催された巡回回顧展を皮切りに、ニューヨークのホイットニー美術館、ミネソタ州ミネアポリスのウォーカー・アート・センターを巡回しました。
グラハムは、2005年、2003年、1976年にヴェネチア・ビエンナーレに参加したほか、複数のドクメンタ(1997年、1992年、1982年、1977年、1972年)に参加しています。2010年にニューヨークのアメリカン・アカデミー・オブ・アーツ・アンド・レターズ賞、2001年にパリ市のフランス・ヴェルメイユ・メダル、1992年にニューヨークのスコウヒガン・メダル(ミクストメディア部門)を受賞。
日本では、2003年に千葉市美術館で開催された「ダン・グレアムによるダン・グレアム」展が北九州市立美術館を巡回しました。

Press Release Download