EXHIBITIONS

グループ展 「Fukei-Ga (Landscape Painting)」

会期: 2024年3月23日(土) – 4月27日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー(complex665) 
参加作家:ルーカス・アルーダ、児島善三郎、アマデオ・ルシアーノ・ロレンザート
オープニング・レセプション: 3月23日(土)18:00 – 20:00

タカ・イシイギャラリーは3月23日から4月27日まで、グループ展「Fukei-Ga (Landscape Painting)」を開催いたします。本展ではルーカス・アルーダ、児島善三郎、アマデオ・ルシアーノ・ロレンザートによる「風景」を描いた作品約10点を展示いたします。

われわれの周りには、われわれが造ったものではなく、しかもわれわれと異なった生命や構造をもったもの、木々や花や草、川や丘や雲がとりかこんでいる。幾世紀にもわたって、それらはわれわれに好奇心やら畏怖心を吹きこんできた。歓びの対象ともなってきた。われわれはそれらを、自分たちの気分を反映させるよう想像力を働かせて再創造してきた。いわゆる自然という観念は、こうした木々や雲から成っているものと考えられている。

ケネス・クラーク著/佐々木英也訳『風景画論』筑摩書房 2007年p.15

17世紀以降に絵画のジャンルとして確立された「風景画」の歴史は、各時代における画家、ひいては人間の自然観の変遷を示唆しています。アルーダは美術史の中で明確に定義されるその「風景」というテーマに焦点を当てながらも、記憶のイメージを基に描きます。彼の「風景画」は心象や非物質的なものの反映とも言えます。一方児島にとっての「風景画」とは、愛着のある日本の風景や変わりゆく日々の光景を永く人の世に残る芸術へと昇華する方法であったのかもしれません。「児島様式」と呼ばれる自由で動きのある線でとらえた樹木や雲の表現には、日本の風土を日本的な技法で表すという児島の実践が見て取れます。ロレンザートの「風景画」もまた作家を取り巻く生活や環境、都市への独自の視点と解釈を提示します。身の回りの事物の丹念な観察によって描かれた作品は、ロレンザート自身の生活と強く結びついています。

ルーカス・アルーダ(1983-)はサンパウロ生まれ。同都市を拠点に活動。2009年にサンタ・マルセリーナ大学で芸術修士号を取得。アルーダの作品は海景やジャングルといった主題を中心に展開し、抽象と具象、想像と現実の間を揺れ動くような独特の空気感の作品が評価されています。シリーズタイトルの「Deserto-Modelo」とはブラジルの詩人ジョアン・カブラル・デ・メロ・ネトの著作から引用された言葉で、「言語では把握できない無時間的な場所としての砂漠のメタファー」として用いられています。体験の記憶や精神状態を描き起こすような繊細なタッチと光の表現は、見るものを瞑想的な思索へと導きます。近年の個展に「Assum Preto」Fondazione Sandretto Rebaudengo(マドリード、2023年)、「Lugar sem lugar」Instituto Tomie Ohtake(サンパウロ、2022年)、「Lucas Arruda」Pond Society(上海、2020年)、「Deserto-Modelo」Fridericianum(カッセル、2019年)など。テート・モダン(ロンドン)、ソロモンR.グッゲンハイム美術館(ニューヨーク)、バイエラー財団(リーエン)、ポンピドゥー・センター(パリ)などに作品が収蔵されている。

児島善三郎(1893-1962)は福岡市生まれ。福岡県立中学修猷館に学んだ後、長崎医学専門学校薬学科(現・長崎大学薬学部)に入学するも1913年に画家になる強い志によって中退、上京。1925~1928年にはフランスへ留学し人体像の量感表現などを課題とし画業に励みました。帰国後の1930年、「日本人は日本人の絵画を持つべき」という信念のもと「日本的油絵」の確立を目指し里見勝蔵、林武らと独立美術協会を設立。以降、1936年の国分寺への転居などを機に風景画を中心に制作し晩年には熱海、箱根へも赴き熱情をもって風景を描きました。近年の個展に「生誕130年 児島善三郎展」福岡県立美術館(2023年)、「田園の輝き―児島善三郎展」府中市美術館(2007年)、「児島善三郎―日本的油彩画の創造者展」渋谷区立松濤美術館(1998年)など。

アマデオ・ルシアーノ・ロレンザート(1900-1995)はベロオリゾンテ生まれ。1920年から1940年までヨーロッパで過ごし、1948年に帰国。50代で退職して以降、画業のみに専念する生活を送りました。手作りの顔料と櫛を使う独自の描画技法は、特徴的なテクスチャーの作品を生み出します。ベロオリゾンテの暮らしを通じて風景や日常を題材に描き、数千点に及ぶペインティング作品を制作しました。ロレンザート作品の世間の認知は長らく地元の限定的なものでしたが、ここ20年で再評価されブラジル・モダニズムにおける重要な存在となっています。主な個展に「Mínimo, múltiplo, comum」サンパウロ州立美術館(2018年)、Museu de Arte da Pampulha(ベロオリゾンテ、1995年)など。

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