EXHIBITIONS
森山大道|Vintage prints from the 80’s
会期: 2024年3月16日(土) – 4月13日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー / フィルム
タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー / フィルムは、3月16日(土)から4月13日(土)まで、森山大道|Vintage prints from the 80’sを開催いたします。タカ・イシイギャラリーでは4年ぶり、19回目の個展となる本展では、1980年代に制作されたヴィンテージ・プリント18点を展示いたします。
時代を明確に想定しえない精神は、ひたすら壊死に向かいはじめていた。相変わらず出口が見つからないのではなく入口が見つからなかった。そうしてある日気がついたら、身のまわりには、たたずんでいる僕と、ほこりをかぶった一台のカメラと、そして太陽だけが残っていた。ある晴れた日、ふとそれだけを認識したとき、僕のなかにひとつの臨界点が生れた。そして、僕はもうためらわずにカメラを持ち光の中に立った。僕の目の下には僕の影が在った。それだけで充分だった。僕はその地点からふたたび歩きはじめ、そして一冊の写真集「光と影」を作った。そして僕は、もう二度と立ちどまるつもりのない時間に向かって出発した。
森山大道「そして光と影」『犬の記憶』河出書房新社、2001年、p. 260
1972年に写真集『写真よさようなら』を刊行し、既存の様式を否定するアレ・ブレ・ボケの写真の頂点へと到達した森山は、その後低迷状態へと陥り写真との関係性にもがき苦しむ時期を過ごしていました。そのなかで当時『写真時代』(白夜書房刊)の編集長であった末井昭に声を掛けられ、1981年に同誌で「光と影」と題された連載を始めます。花や自動車、街中の看板など、身の回りのありふれた存在を被写体として捉えた作品群は、翌年に同名の写真集としてまとめられ、日本写真協会年度賞を受賞しました。本作ではそのタイトルの通り光と影が白と黒の階調に置き換えられるモノクローム写真の原点を意識させるとともに、シャープな画面はそれぞれの被写体が有するテクスチャーを色濃く記録しています。1982年から83年にかけては『アサヒカメラ』上で連載「犬の記憶」を持ち、写真作品とあわせて自伝的なテキストを執筆したほか、87年には同郷の写真家・安井仲治へのオマージュ写真集『仲治への旅』を刊行します。写真の本質を改めて問い直し、メディウムとのつながりを再構築しようとした森山は、その後『光と影』から発展する形で写真技術の祖であるニセフォール・ニエプス『サン・ルゥへの手紙』(1990年)を発表し、ファッションブランドのヒステリックグラマーとのコラボレーション『Daido hysteric』を行うなど、新たな取り組みを展開させていきます。森山の写真家活動の中で一つの転換点となった1980年代に生み出されたプリントを、この機会にぜひご高覧ください。
森山大道は1938年大阪府池田市生まれ。グラフィックデザイナーを経て、写真家岩宮武二および細江英公のアシスタントとなり、1964年に独立。1968年写真集『にっぽん劇場写真帖』 、1972年写真集『写真よさようなら』を発表。アレ・ブレ・ボケと呼ばれる荒れた粒子、焦点がブレた不鮮明な画面、ノーファインダーによる傾いた構図を特徴とした、既存の写真制度を覆すラディカルな表現で写真界を震撼させた。その評価は内外の美術界に及び、世界各国で大規模な展覧会が開催されている。「William Klein + Daido Moriyama」テート・モダン(ロンドン、2012年)、「オン・ザ・ロード」国立国際美術館(大阪、2011年)、「レトロスペクティヴ 1965-2005、ハワイ/ HAWAII」東京都写真美術館(東京、2008年)のほか、アンダルシア現代美術センター(セビリア、2007年)、Foam写真美術館(アムステルダム、2006年)、カルティエ現代美術財団(パリ、2003年)、ヴィンタートゥール美術館(2000年)、サンフランシスコ近代美術館(1999年、メトロポリタン美術館巡回)にて個展を開催。ハッセルブラッド国際写真賞(2019年)、国際写真センター(ニューヨーク)Infinity Award功労賞(2012年)、ドイツ写真協会・文化功労賞(2004年)、日本写真協会 作家賞(2004年)、第 44 回毎日芸術賞(2003年)、日本写真批評家協会新人賞(1967年)を受賞。