EXHIBITIONS

グループ展 「マイマップでラインとシェイプを描画する」

会期: 2023年11月19日(日) – 12月28日(木)
会場: タカ・イシイギャラリー 前橋
参加作家: 遠藤文香GORILLA PARK松田ハル長島伊織那須佐和子山田康平
アーティストトーク: 11月19日(日)15:00 – 16:00
オープニング・レセプション: 11月19日(日)17:30 – 19:30

タカ・イシイギャラリー 前橋では、2023年11月19日(日)から12月28日(木)まで、遠藤文香、GORILLA PARK、松田ハル、長島伊織、那須佐和子、山田康平によるグループ展「マイマップでラインとシェイプを描画する」を開催いたします。本展では、90年代生まれの若手作家による作品をご紹介いたします。

現代社会に生きる中で、自分を含む多くの人が使用するものの中に「地図」がある。知らない土地に行く時、電車の乗り換えや行きたいお店を調べる時、様々な場面で使われているはずだ。また今日、地図のデジタル化は進み続け、小さな手元に収まるスマートフォンの中で全てが完結している。

その、誰もが見ている「地図」は、実は書き手に委ねられている。地図を見ていると現実の状態と重ね合わせてしまいがちだが、実際には都道府県の境界線を現実の空間で認識出来なかったりするように、現実を地図上に再構築しているものだ。また、地図は専門的な機関によって正確な測量データの上で作成されるものなので、そこに自由に個人が介入することができず、ある種権威的なものである。なので、縮尺や距離は正確だが、それだけでは表現できないものがある。そこで必要となるのが「マップ」である。「マップ」は、狭いエリアに限定して作られていることが多く、例えば観光マップやグルメマップといったものは書き手が勧めるお店などが太文字で書かれていたり、その写真が掲載されていたりと、デザインも多様で自由な表現を採用している。

本展覧会タイトルは、Google マップに備わっている機能の一つである「マイマップ」の操作の中にある、「ラインとシェイプを描画する」という項目についてのGoogle help上の記述から引用を行った。「ラインとシェイプ」という二つの言葉は絵画や写真、彫刻といった美術作品ともかなり関係が深い言葉である。「地図」が現実を再構成して伝え、共有するためのメディア(地図は現実に奉仕している)であるのに対し、「マイマップ」はその個人の使い方に全て由来される。また、ラインとシェイプの二つを意識的に使うことによって、ある現実を強調したり誇張したり歪めたり隠したりすることができる。(またそこには、時間や、感情も内包できる)

本展は、この「マイマップ」という概念を展覧会に持ち込むことによって、自分を含む六人の作家を選び出した。この複雑化する現代社会の中で、持っている「マップ」の種類によって出会うもの、気付くものも変わっていくだろう。そう、「ライン」は境目を生むものではなく、繋げたい。「シェイプ」はその形から、過去や未来を想像してほしい。それらの希望を、「マイマップ」を持つことで新たな問いを創り上げたいと願う。

2023年11月 山田康平

遠藤文香は、1994年生まれ。 2021年東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻修了。植物や動物、風景などの被写体を「独立した他者」として対峙し撮影を行う遠藤は、アニミズムの想像力を介しそこに宿る神聖性を捉えた写真作品で知られています。作品の特徴的な要素とも言える淡い色彩は、ストロボの光を当て、デジタル加工を施すことで生み出されており、その幻視的イメージは自然における人為の介入による境界の曖昧さを提示し、森羅万象と個との繋がりについて鑑賞者へと再考を促します。

GORILLA PARKは、1998年埼玉県生まれ。2021年武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業。2023年東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修士課程修了。GORILLA PARKは、普遍的な素材を用いて地球上にある特定のイメージを現実の物質として再構築しています。カービングの技法により掘り起こした絵画的な浮き彫りの上に作家が制作前に木を通して見えたというラインをスプレー塗料や岩絵具で描くことで、立体を立ち上げながらも、平面の正面性に還元する試みを行っています。

松田ハルは、1998年岩手県生まれ。2021年筑波大学芸術専門学群美術専攻版画領域卒業。2023年京都芸術大学大学院グローバル・ゼミ修了。松田は、3Dスキャンした人間の身体やフェイクグリーンをVR上で加工し、シルクスクリーン印刷や彫像へのドローイングに変換することにより現実空間にイメージを複写する作品を制作しています。版画(現実)とVR(仮想)を組み合わせた作品は、複製技術が発達した現代において「仮想とはなにか」、その本質を問い直しています。

長島伊織は、1997年大阪府生まれ。2020年武蔵野美術大学油絵学科油絵専攻卒業。長島は、人々の生活やその痕跡をテーマに自身で撮影した写真や、映画、小説、インターネット上などから収集したイメージの背景にある物語を構想し、その物語を軸にした具象画を制作しています。参照元となる具体的なイメージから作家自身の感性を通して新たに再構築され描かれる無形の物語の数々は、長島の絵画にある種の抽象性をもたらしています。

那須佐和子は、1996年東京都生まれ。2021年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業、2023年同大学大学院美術研究科修士課程修了。演劇一家に生まれ育ち、絵画を研究する傍ら舞台美術家としても活動。那須の制作は、刷毛で丁寧にストロークを繰り返すことで画面を洗い流すように層を重ねていきます。「かつていた画家の手先」を感じ取りながら制作された抽象画や、複数の景色が重なるように画面上に共存し合う風景画など、絵画の在りかをテーマに制作を行っています。

山田康平は、1997年大阪生まれ。2020年武蔵野美術大学油絵学科油絵専攻卒業、2022年京都芸術大学修士課程美術工芸領域油画専攻修了。キャンバスと紙にたっぷりとオイルを染み込ませることから始まる山田の制作は、起点や輪郭となる黒の線をひき、絵の左上には光に見立てている黄色をのせ、それから強く鮮やかな色で一気に画面を覆います。筆を重ねることでキャンバスの表面は更に滑らかに整えられ、面と面がぶつかる場所から浮かび上がる色は強さを増し、何層にも重ねられたレイヤーから山田作品特有の奥行きが絵画空間に生まれます。

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