EXHIBITIONS

スターリング・ルビー 「Heat. Minthe. Swells.」

会期: 2023年11月23日(木) – 12月23日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー(TERRADA ART COMPLEX II)
オープニング・レセプション: 11月23日(木)18:00 – 20:00

タカ・イシイギャラリーは11月23日から12月23日まで、スターリング・ルビーによる個展「Heat. Minthe. Swells.」を開催いたします。今回は本展のほかに、タカ・イシイギャラリー 京都と東京の草月プラザでもルビーの個展を同時開催し、3つの展覧会すべてで新作を発表します。本展はルビーの当画廊での4回目の個展となり、TURBINE(タービン)シリーズの新作が展示されます。

TURBINEペインティングは当画廊で2018年に展示したWIDWシリーズを拡大させた作品です。WIDWとは「窓WINDOW」の略で、WIDWペインティングは、強烈な赤やオレンジ、セルリアンブルーを執拗にキャンバスに塗り、そこに帯状の厚紙をコラージュすることで画面を唐突に縦横に分断する作品でした。2021年に開始したあたらしいシリーズもまた、ペインティングとコラージュの境界を問い直そうとするものです。WIDWペインティングに類似する要素が、力強くあざやかなキャンバスを斜めに切り裂く様は、タービンや風車のみならずハリケーン、戦争、爆発や火−−−−すなわち「熱」の放出体を思い起こさせます。そのほか、本展には北斎の「神奈川沖浪裏」のうねりやコキュートス川のニンフ[1]を取り上げた作品も含まれています。それらに内在するダイナミズムを、ルビーは抽象へと昇華してみせます。窓から見るのではなく、観るものが完全にのみ込まれるような動力をもつそれらの作品によって、わたしたちは自然の力と感覚的な体験が継ぎ目なく溶け合うような世界に没入させられることでしょう。

多くの問題を取り上げるなか、ルビーは特に暴力や社会変化についてクロスメディア的に探求することで知られています。示唆に富むシリーズ作品はロシア構成主義と未来派のテーマや美学を引用して制作され、なかでもエル・リシツキーやジャコモ・バッラの、没入感ある抽象や多層的な構成にインスピレーションを受けたと作家は明かしています。政治的背景は大きく異なりますが、どちらの芸術運動も、激動の時代において美術がもつ革新の力に注目するものでした。ルビーのTURBINEペインティングは自己破壊の印象を利用することで、社会やイデオロギーの構造に内在する脆弱性を掘り下げて検証しようとしています。

今回の「Heat. Minthe. Swells.」展で、作家は東アジアを再訪することになります。前回の2014年、韓国と日本そして中国で展覧会を行った際の体験を、ルビーは旅日記のかたちで克明に記録しました。その記録はのちに『Crash』誌に掲載されています。

[1] 訳注:展覧会名にもある「Mintheメンテー」。ギリシャ神話の美しい精で、香り高いハーブであるミントの語源。

【同時開催】

スターリング・ルビー「SPECTERS TOKYO」
会期: 2023年11月23日(木)– 12月23日(土)
会場: 草月会館1F石庭「天国」

スターリング・ルビー「SPECTERS KYOTO」
会期: 2023年11月25日(土)– 2024年1月20日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー 京都

スターリング・ルビーは1972年生まれ。光沢のあるポリウレタンやブロンズ、鋼鉄を用いた立体作品から、ドローイングやコラージュ、ふんだんに釉掛けした陶器、油彩画、写真、映像、さらにはキルト、タペストリー、衣服、ソフトスカルプチャーといった布作品まで、多様な素材や技法を駆使する。ルビーの作品では常にさまざまな要素が緊張関係を保ち、危うい均衡を成り立たせており、社会の中の暴力や圧力、美術史に関わる問題のほか、自身の過去も扱われる。全ての作品において、流動と静止、ミニマリズムと表現主義、純粋さと汚れの間で揺れ動く作家像を見ることができる。

ルビーはこれまでGalleria Doria Pamphilj(ローマ、2021)、Museum of Cycladic Art(アテネ、2021)、ICAマイアミ(マイアミ、2019)のちICAボストン(ボストン、2020年)へ巡回、Museum of Arts and Design(ニューヨーク、2018)、ベルヴェデーレ美術館 冬の宮殿(ウィーン、2016年)、FRACシャンパーニュ=アルデンヌ(ランス、2012年)のちジュネーヴ現代美術センター(ジュネーヴ、2012年)、ローマ現代美術館(2013年)に巡回のほか、ロサンゼルス現代美術館(2008年)等で個展を開催。2014年には 光州ビエンナーレ、台北ビエンナーレ、ホイットニー・ビエンナーレに参加。 

ルビーの彫刻作品「DOUBLE CANDLE」 (2018)はハーシュホーン博物館と彫刻の庭(ワシントンDC)に常設されている。またそのほかニューヨーク近代美術館、ソロモンR.グッゲンハイム美術館(ニューヨーク)、シカゴ現代美術館、ロサンゼルス現代美術館、ハマー美術館(ロサンゼルス)、サンフランシスコ近代美術館、テート・モダン(ロンドン)、パリ市立近代美術館、ポンピドゥー・センター(パリ)、ストックホルム近代美術館を含む多くのコレクションに作品が収蔵されている。

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