EXHIBITIONS

竹村京 「ながれるひかりはやいいろ」

会期: 2023年7月15日(土) – 9月3日(日)
会場: タカ・イシイギャラリー 前橋
オープニング・レセプション:7月15日(土)17:30 – 19:30

*対談企画: 竹村京 x 新藤淳
日時: 8月19日(土)17:30 – 19:00
予約制(定員: 30名)
こちらのフォームよりご予約をお願いいたします。

この度、タカ・イシイギャラリー 前橋は、7月15日(土)から9月3日(日)まで、竹村京による個展「ながれるひかりはやいいろ」を開催いたします。本展では、近年、竹村が向き合う素材である蛍光絹糸を用いた作品を含め、最新作10点を紹介します。

広島で展示している蛍光シルクの修復シリーズは糸を光らせるために青色LEDを当てなければならないのだが、光をあて続けると光が消える、ゆっくりとしたろうそくのようなものである。展覧会は3ヶ月ほどあったので1ヶ月ごとに光を足しにいくのだが、毎回明らかに青い光が直接当たっているところの光が消えている。光がある糸はほんのり薄緑色だが、光が無くなった糸はいのちが尽きたようなまっさらな白になる。その白くなったところに光を持った糸を縫い足すのでよく光のあたるところは糸が分厚くなっていく。

夜明けで窓の外が白んできたようなので振り向くと今縫っている糸と同じ色の空である。

暖かくなってきたからか仏壇に飾る花が数日で頭を垂れる。まだ元気な数本は窓辺に飾る。この一週間は黄色い菊で北向きの窓辺が明るくなる。

庭にこの前咲いたと思っていた黄色い花が雨が上がって気づくともう終わっていてアジサイの白が見える。母のアジサイは植え付けた当初緑色だったが今はピンクと紫を混ぜたような色に変わっている。東京の実家から連れて来た榊は最初葉が全部赤くなりだめかと思ったが2年経った今では生き生きと緑の葉をつけている。

どどめがすずなりの桑には鳥がよくついばみにくる。食い散らかした後は葉がどどめ色に染まる。蚕糸技術センターからもらってきた新小石丸とぐんま黄金に毎朝晩葉を摘んで食べさせる。すごい勢いで食べる音と共に縫うのは楽しい。

昨日満月だったからか新小石丸が一斉に空に8の字を描き始めた。糸を吐きたい合図なので一匹ずつに細長い筒を作って放り込んでいく。

あまり食べていなかったぐんま黄金は満月のあとものすごい勢いで食べ始めてむくむく大きくなる。

昨日の夜最後の一匹が糸を吐き始めた。新小石丸は完璧な繭を作り上げて真っ白である。

竹村京

暫くの沈黙から世界が再び動き始めた今、竹村の作品を成す一針一針が放つ光彩とその変容は溢れ出した喜びと同居する憂心をうつすようだ。数千年を遥かに超える前からある原子が宇宙を駆け回り、もはや存在しない場所からきておそらく誰も知る由もない場所へ向かうように、蚕とオワンクラゲの出会いから作家が手引するのは日々傍にある、世界の相貌でもある。時の波間を漂う光、光が生み出す留まることのない色が織りなす世界を是非この機会にご高覧ください。

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