EXHIBITIONS

山田康平 「Strikethrough」

会期: 2023年7月1日(土) – 29日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー(complex665)
オープニング・レセプション: 7月1日(土)18:00 – 20:00

*「絵画鑑賞会 楊博・山田康平の作品とともに」
ゲスト:佐原しおり(東京国立近代美術館学芸員)
日時:7月8日(土)18:00 – 19:30
予約制(定員: 25名)
こちらのフォームよりご予約をお願いいたします。
*本プログラムは定員に達したため、予約受付を終了いたしました。

タカ・イシイギャラリーは、7月1日(土)から29日(土)まで山田康平の個展「Strikethrough」を開催いたします。弊廊での初個展となる本展では、大小様々なキャンバスに描いた油彩画とアルシュ紙を用いた小作品を展示致します。

絵を「描く」という言い方に少し違和感があります。実際、それに間違いはないのですが、私は「覆う」であったり「隠す」という言い方の方が、自分の絵を観ていると納得することが多いです。殆どを刷毛で描くことが最近の絵では多く、その動かし方は寄せては返す海の波の動きと、同じような感覚を覚えます。海を外から眺めていると分からないですが、実際は思っていたよりも深かったり、冷たさを感じますが、その感覚は、海は人のために存在していないことを思い出します。私は絵を描く時に表面を感じるだけではなく、そこには裏が存在することの認識を忘れないように描いています。

2023年5月 山田康平

山田康平が描く絵には、筆や刷毛がキャンバスの上を心地よい疾走感と共に勢い良く駆け抜ける様子が見えます。繰り返される大きく素早いストロークにより、キャンバスの表面は丹念に色で覆われ、整った美しい筆跡と共に隣り合う色が重なりグラデーションが生まれます。

山田の制作は、キャンバスと紙にたっぷりとオイルを染み込ませることから始まります。起点や輪郭となる黒の線をひき、絵の左上には光に見立てている黄色をのせ、それから強く鮮やかな色で一気に画面を覆います。絵の具は画面に染み込んだオイルや隣の色と溶け合い、時には思いもよらない色が生まれ、色面が構成されていきます。筆を重ねることでキャンバスの表面は更に滑らかに整えられ、面と面がぶつかる場所から浮かび上がる色は強さを増し、何層にも重ねられたレイヤーから山田作品特有の奥行きが絵画空間に生まれます。

本展のタイトル「Strikethrough」には、取り消し線と印刷用語で紙の裏までインクの油分がにじみ出る現象を指す二つの意味が存在し、画面が色で覆われ、重ねた色が混ざり合っている状態や、キャンバスに染み込んだオイルの様子を表していると言えます。山田は、作品とその制作過程、自身が発する言葉や記す文字に幾重にも意味を持たせ、同時にその中に外からは見えずに隠れている何かが存在している事も意識しています。

色と面を用いて描かれる、奥行のある抽象的な空間は、自身が目にした記憶の奥底にある風景や、この世界で起こる事象が基になっています。筆を進めることで形や記号として表出するそれらは色面へと変化し、表面しか見えていなかった物の内側に光があたります。描かれた奥行のある空間の中には、山田が見つけ出した物事の意味や本質が存在しています。

山田康平は、1997年大阪生まれ。2020年武蔵野美術大学油絵学科油絵専攻卒業、2022年京都芸術大学修士課程美術工芸領域油画専攻修了し、現在東京で活動を行っている。主な個展として、「それを隠すように」biscuit gallery(東京、2022年)、「線の入り方」MtK Contemporary Art(京都、2022年)、京都岡崎の蔦屋書店ギャラリースペース(京都、2022年)、「road」代官山ヒルサイドテラスアネックスA(東京、2021年)、「のぼり、おりる」ギャラリー美の舎(東京、2020年)。主なグループ展として「nine colors XVI」西武渋谷店(東京、2022年)、「biscuit gallery Opening Exhibition II」biscuit gallery(東京、2021年)、「Up_01」銀座蔦屋書店 GINZA ATRIUM(東京、2021年)、アートフェア「ARTISTS’ FAIR KYOTO」京都文化博物館別館(京都、2021年、2020年)に参加。主な受賞は、CAF賞(2020年)入選。

Press Release Download