EXHIBITIONS

山元彩香 「We are Made of Grass, Soil, Trees, and Flowers」

会期: 20211016日(土) – 1113日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム

安心して作品をご覧いただけるよう様々な感染症対策を徹底しております。

タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムは、10月16日(土)から11月13日(土)まで、山元彩香「We are Made of Grass, Soil, Trees, and Flowers」展を開催いたします。タカ・イシイギャラリーで3度目の個展となる本展では、2019年にアフリカ、マラウイで撮影された作品を発表いたします。

自然光の差し込む静閑な画面のなかに佇む少女たちのポートレートで知られる山元は、それらの写真表現において、被写体個人が日頃纏っている仮面の下に覆い隠された器としての人間の普遍的な姿へと関心を寄せています。2009年のエストニアでの制作以降、言語による意思疎通が難しい異国の地を訪れては、被写体や衣装、撮影場所を現地で見繕い、言葉を交えず身体的感覚によるコミュニケーションを通じて制作を行うという独自のプロセスを取り入れてきました。一定のトーンを放つ山元の作品からは想像し難いほどに多層的に練り込まれたその写真行為は、積み重ね行われることにより、少女たちがみせる無意識の断片の集積として結実しています。

人間の属性を取り払ってでもなお身体にかろうじて残り続ける何者か、その人をその人たらしめるものが何なのか探り続けてきた。—それぞれが持つ特性や個性はもちろん尊いものだと受け入れつつ、踏みしめる土の下に潜ってゆくと、あらゆる境界を超越し、人間の記憶の起源を辿るかのように繋がる根のようなものが存在していないか。

2021年8月 山元彩香

2019年、山元は、自身の新たな試みとして映像作品「organ」を発表しました。定点カメラで切り取られたその画面に響く、少女が奏でる残響にも似た歌声は、鑑賞者へと循環、連鎖することで個々が持つ器としての身体へ音を宿します。これまで山元が築き上げてきた作品世界をそのままに声という要素を折り重ねた新たな試みは、これまで作家が被写体と対峙する中で体感した「鏡反射させるように映し合う」感覚や、作品の比喩として表現される憑依、変容という現象とも重なりをみせ、作家の意識がより強固に示されたものとなりました。

本展のタイトル「We are made of Grass, Soil, Trees, and Flowers(人は土と木と草と花でできている)」は、タカ・イシイギャラリーでの2018年の個展タイトルに花という単語を付足しており、前作までの制作における作品概念の存続の意を表しています。本展では、これまでの中心的な撮影地であった東欧から飛び出し、アフリカ大陸マラウイを訪問し撮影された作品を展示いたします。訪れた土地やそこに住まう人々が内包する文化、習慣、信仰などの蓄積された帰属意識が包括的に受け入れられ制作に落とし込まれています。映像作品を含むこれまでの制作の延長線上として、より親密な視点へと膨らみをみせる本作からは、豊かに差し込むアフリカのやわらかな光と現前する被写体の無意識な姿とが交差するその瞬間に魅せられた作家の静かな興奮が伝わります。

本展の開催と同時期に、作品集『We are Made of Grass, Soil, Trees, and Flowers』が刊行されます。

【新刊情報】
山元彩香 『We are Made of Grass, Soil, Trees, and Flowers』
T&M Projects刊(2021年)
販売価格: 未定
96頁、A4変型
11月一般発売予定

1983年神戸市生まれ。2006年に京都精華大学芸術学部造形学科洋画コースを卒業。大学では最初、絵画を専攻するが、次第に自身の身体を使ったパフォーマンス作品や映像作品の制作に移行し、2004年のサンフランシスコへの留学を機に写真の制作を始める。言語によるコミュニケーションが難しい状況のなかでの撮影は、写真というメディアが本質的に抱える性質以上に他者との様々な接点を作家にもたらし、以降、暴力的でありながらも極めて魅力的なイメージ生成の場と言えるポートレートの撮影を続ける。「自分の瞼に蓄積されたイメージでは想像しえない、既知の言葉や知識が通用しない場所」を撮影地に選び、2009年のフィンランド、エストニアでの撮影を皮切りに、エストニア(2010年)、ラトビア(2011、12、14年)、フランス(2012、13年)、ロシア(2014年)、ウクライナ(2015年)、ブルガリア(2016年)、ルーマニア(2017年)、ベラルーシ(2018年)、マラウイ(2019年)と各地で撮影を行ってきた。2021年11月に「新進作家展 vol.18」東京都写真美術館(東京、2021年)へ参加予定。2019年には、写真集『We are Made of Grass, Soil, and Trees』において第19回相模原市総合写真祭フォトシティさがみはら さがみはら写真新人奨励賞を受賞。清里フォトアートミュージアム(山梨県)、Villa Pérochon Centre d’Art Contemporain Photographique(二オール、フランス)に作品が収蔵されている。

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