EXHIBITIONS

ジャスティン・カギアット 「Doll」

 会期: 2021年3月27日(土) – 4月24日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー(complex665)

安心して作品をご覧いただけるよう様々な感染症対策を徹底しております。

タカ・イシイギャラリーは、3月27日(土)から4月24日(土)まで、ジャスティン・カギアットの個展「Doll」を開催いたします。タカ・イシイギャラリーでの初の個展となる本展は、2020年に制作された新作の絵画作品を発表いたします。

―カギアットの個展に寄せて
トーマス・キリアン・ローチ、2021年

ジャスティンの絵画作品の一つと数週間一緒に暮らした。彼とはアトリエを共同で使っていた。私はちょうどパートナーと別れた頃で疲弊しきっていた。彼が制作中とわかっているときは、私は仕事のあと、ぶらついてから遅く帰るようにした。彼がまだそこにいたら、私は「ハロー」と声をかけ、彼がいなくなるまで少しの間自分も制作した。それからシンクで体を洗い、床で眠った。彼は、私の生活習慣が変わったことについて何も言わなかった。

その時期のある朝、私たちの個室を隔てるドアが開いていて、病み上がりの者が見た風景を大きく描いた彼の作品をじっくり見た。枠に張っていない麻布に描かれ、壁に鋲で留められている。サイズが大きく、何週間もかけて塗り重ねられているため、麻布は硬直し、鋲に引っ張られて四辺が内側にたわんでいた。チョークや鉛筆による下図は見当たらなかった。変更や調整が繰り返されたため、フォルムも題材も奥行きがまちまちになっている。暗がりで見てもストロボの光を浴びているかのようで、画面は煌めく浅浮き彫りのレリーフを思わせた。絵の中にいろんな要素が見えた。例えば、植物の繁殖―挿し木、株分け、発芽、接ぎ木。あるいは大判のアニメのセル画がごちゃ混ぜに合成されたイメージ―背景画の担当者が一つ一つ注意深く光の当たり具合を描き分けた高層ビルの窓、コンポジターがセル画を回転させて作った渦、色彩設計者があらゆるものを手当たりしだいに破裂させたようなイメージ。オットー・マイヤー=アムデンによる“古代のアポロ”、独特の形象や王冠などのモチーフの数々。ナビ派。リリーの妊娠中の膨らみ。胚あるいは胎児期のO、そして2歳の誕生日を迎えた彼がヒマワリで床を叩き、そこらじゅうに花びらを散らかす様子。

記憶とは、単線的なものではない。星を見るのに似ている。一つ一つの作品は、経験の一部を捉えたものだ。過去の発露なのだ。私は夜更けまで自分のノートを見返した。「芸術作品は、今では静止してしまった何らかの活動を示す図表である。しかしその図表は、天体がそうであるように、過去の活動が発した光により可視化されている。」[1] その場で寝転びながら、まさにそんなことを自分で考えていたと思う。すべての精緻なものと同じく、それは繊細で、全く透きとおっていて、部分的にしか自分のものでなかった。私は再び横になり、記憶の喪失や衰えについて考えた。高層ビルの窓や花びらを、何物かに生えたカビの胞子や菌糸に見立て、建築物をその微地形図に置き換えてみた。

[1] ジョージ・クブラー『時のかたち』中谷礼仁・田中伸幸訳(2018年、鹿島出版会)48−49頁。本文訳者により表現を一部変更した。

カギアットは、1989年生まれ。ニューヨークとオークランドを拠点に活動。近年の主な個展としてModern Art(ロンドン、2020年)、15 Orient(ブルックリン、2018年)などがあり、北米地域やヨーロッパのギャラリーやプロジェクトスペースでのグループ展に多数参加している。その他のプロジェクトに、Kunsthalle Zürich(チューリヒ、2017年)でのパフォーマンスやThe Sunroom(リッチモンド、2017年)などが挙げられる。詩作集『A RAT, A DOG, A BOY』(2017年)をCodetteより刊行。

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