EXHIBITIONS

森山大道 「Silkscreen」

会期: 2020年1月11日(土) – 2月22日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム
オープニング・レセプション: 1月11日(土)18:00 – 20:00

タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムは、1月11日(土)から2月22日(土)まで、森山大道個展「Silkscreen」を開催いたします。森山は、1960年代半ばより一貫して「写真とはなにか」を問い続け、「通過者の視線」と自ら称するカメラワークにより、日本写真史に大きな転換をもたらしました。タカ・イシイギャラリーでは3年ぶり、18度目の個展となる本展では、2013年に制作された大判のシルクスクリーン(絹など織り目の細かいスクリーンを通して、直接インクや絵の具を刷る技法)による作品を中心に、約6点を展示いたします。

被写体やそこに読み取られるストーリーを中心とする従来の写真観に疑問を呈し、あらゆる写真の解体と、断片としての映像の同一平面化により、叙情性の排除を推し進めた森山は、1970年代初頭には写真否定の果てに撮影主体の風化による「写真との肉離れ」を経験しました。「写真とはなにか」という問いを留保したまま、現状打開の試みにおいて、オリジナルプリントの評価へと向かう時代の流れと呼応するように、雑誌紙面を中心とした発表から、それまで敬遠していた展覧会におけるプリントの発表へと形式を転換し、その中でシルクスクリーンの制作にも熱中しました。

写真に先がけて絵画やデザインに親しんだ森山は、グラフィックを好み、メディアによって増幅されたイメージを複製し記号化するポップ・アートに影響を受けました。とりわけ、アンディー・ウォーホルへの強い共感は、『プロヴォーク』第3号に掲載された、缶詰やコーラなど商品の列を撮りコピーで階調を飛ばした作品や、事故・事件など同時代を象徴する映像を、実写・複写、あるいはテレビ・新聞写真といったジャンルの区別なく示した「アクシデント」のシリーズをはじめとして、随所に見ることができます。また森山は、幼少の頃より街を歩きながら目にしたポスター、看板、映画のスチール写真やスクリーンなど、印刷物上で網目になった風景や人物に愛着を示しており、1960年代以降芸術の大衆化とともにポップ・アーティストが好んで利用したシルクスクリーンについて、網目を介した印刷技術という点で作家の性向との親和性を指摘することができます。

1974年3月に開催された「森山大道プリンティングショー」では、1971年に横尾忠則とともにニューヨークに1ヶ月滞在して撮影したプリントをその場で複写し、シルクスクリーンの表紙と合わせて製本した写真集『もうひとつの国』を即売、同年5月には、シルクスクリーンによる「ハーレー・ダヴィッドソン」展を開催し、同じイメージの繰り返しや、一枚の巨大な写真製版で刷りきった当寸大のハーレーを展示しました。

「ふっと気が変わると、写真を離れて急にシルクスクリーンとか何かやりたくなる」と述べているように、森山はその後も折に触れてシルクスクリーンを制作しており、作家にとって、写真の領域と可能性を広げる手段として、シルクスクリーンという印刷技法が重要な意味を持っていると言うことができるでしょう。

森山大道は1938年大阪府池田市生まれ。グラフィックデザイナーを経て、写真家岩宮武二および細江英公のアシスタントとなり、1964年に独立。1968年写真集『にっぽん劇場写真帖』 、1972年写真集『写真よさようなら』を発表。アレ・ブレ・ボケと呼ばれる荒れた粒子、焦点がブレた不鮮明な画面、ノーファインダーによる傾いた構図を特徴とした、既存の写真制度を覆すラディカルな表現で写真界を震撼させた。その評価は内外の美術界に及び、世界各国で大規模な展覧会が開催されている。「William Klein + Daido Moriyama」テート・モダン(ロンドン、2012年)、「オン・ザ・ロード」国立国際美術館(大阪、2011年)、「レトロスペクティヴ 1965-2005、ハワイ/ HAWAII」東京都写真美術館(東京、2008年)のほか、アンダルシア現代美術センター(セビリア、2007年)、Foam写真美術館(アムステルダム、2006年)、カルティエ現代美術財団(パリ、2003年)、ヴィンタートゥール美術館(2000年)、サンフランシスコ近代美術館(1999年、メトロポリタン美術館巡回)にて個展を開催。ハッセルブラッド国際写真賞(2019年)、国際写真センター(ニューヨーク)Infinity Award功労賞(2012年)、ドイツ写真協会・文化功労賞(2004年)、日本写真協会 作家賞(2004年)、第 44 回毎日芸術賞(2003年)、日本写真批評家協会新人賞(1967年)を受賞。

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