EXHIBITIONS

奈良原一高 「Rrose Sélavy」

会期:2019年11月1日(金) – 12月21日(土)
会場:タカ・イシイギャラリー 東京 ビューイングルーム

タカ・イシイギャラリーは11月1日から12月21日まで、奈良原一高の個展「Rrose Sélavy」を開催いたします。奈良原一高は、1970年代に瀧口修造の依頼でアメリカ・フィラデルフィア美術館に所蔵されているマルセル・デュシャンの「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(通称:大ガラス)」を撮影しました。透過性のあるガラス作品を展示室に溢れる光の移ろいの中で撮影した一連の写真は、『デュシャン大ガラスと瀧口修造シガー・ボックス』として1991年に出版されました。本展では、その中から代表的なイメージ7点を収録し2018年に刊行された写真ポートフォリオ「Rrose Sélavy」を展示いたします。

 「美術館とレストランではシャッターを切らない」と決めていた奈良原一高は、それでもマルセル・デュシャン《大ガラス》に言葉を添える本を、という瀧口修造の見果てぬ夢から要請されて、1973年の秋の或る日、意を決してフィラデルフィア美術館の伝説的な一画に入る。壁を打ち抜いた窓越しに見える、休止しがちだった噴水が、幸運にも水のしぶきを立てはじめた。
 のちに写真家はこの一日に至るまでをふり返りながら、山頂の岩に落ちた一滴の水である自分が、やがて地下の暗い道を伝って一本の樹木の根に行きあたり、吸いあげられてその葉に宿る、という過程として語っている。《大ガラス》という稀有な美術作品を一枚の葉と見立て、自分の写真を、その葉に宿る水滴として考えたのである。この水滴はその一日、罅割れたガラスに射し込む光の変化とその時間に身を委ねた。水滴はそれからさらに長い歳月の地下を伝って、いまクリスタルプリントとして蘇り、いっそう燦爛たる偶然となって散乱し、私たちを幻惑しようとしている。

平出隆「一滴の散乱」
奈良原一高ポートフォリオ「Rrose Sélavy」に寄せて

写真家の作品としては未発表のままであった「大ガラス」シリーズより、奈良原と親交のあるアーティスト・岡崎和郎がセレクトした7点の写真をクリスタルプリントで透明かつ色鮮やかに甦らせ、また同じく奈良原と親交の厚い勝井三雄がその装丁を手掛けたポートフォリオ「Rrose Sélavy」は、奈良原の写真作品の再考に加え、奈良原を中心とした勝井と岡崎の関係、またその背後のデュシャンと瀧口という、作品を巡る様々な関係性を想起させます。

【ポートフォリオ詳細】
奈良原一高「Rrose Sélavy」
奈良原一高アーカイブズ+東京パブリッシングハウス刊、2018年
デザイン・制作協力: 勝井三雄、岡崎和郎、トップアート鎌倉
ラムダ・クリスタルプリント7点収録
イメージ・サイズ: 52.2 x 37 cm / ペーパー・サイズ: 61 x 50.8 cm
ボックス・サイズ: 61.2 x 52.7 x 5.5 cm
Edition of 7

奈良原一高は1931年福岡県生まれ。検事であった父親の転勤に伴い、国内各地で青春期を過ごす。1946年に写真撮影を始める傍ら、芸術や文学などにも関心を寄せ、1954年に中央大学法学部卒業後、早稲田大学大学院芸術(美術史)専攻修士課程に入学、1955年には池田満寿夫、靉嘔ら新鋭画家のグループ「実在者」に参加。池田龍雄や河原温といった芸術家や瀧口修造らとも交流を深めると同時に、東松照明、細江英公らとも知り合い、1959年には彼らとともにセルフ・エージェンシー「VIVO」を設立(1961年解散)。その後も、パリ(1962-65年)、ニューヨーク(1970-74年)と拠点を移しながら世界各地を取材し、多数の展覧会を開催。写真集も数多く出版し、国際的にも高い評価を受けている。主な個展に「人間の土地」松島ギャラリー(東京、1956年)、「Ikko Narahara」ヨーロッパ写真美術館(パリ、2002-03年)、「時空の鏡:シンクロニシティ」東京都写真美術館(2004年)、「王国」東京国立近代美術館(2014-15年)など。主な受賞に日本写真批評家協会新人賞(1958年)、芸術選奨文部科学大臣賞(1968年)、毎日芸術賞(1968年)、日本写真協会年度賞(1986年)、紫綬褒章(1996年)など。

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