EXHIBITIONS
荒木経惟 「恋夢 愛無」
会期: 2018年5月25日(金) – 6月23日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー 東京
タカ・イシイギャラリーは、5月25日(金)から6月23日(土)まで、荒木経惟個展「恋夢 愛無」を開催いたします。2016年10月にオープンした東京スペース(complex665)においては初、タカ・イシイギャラリーでは通算26度目の個展となる本展では、6×7フィルムで撮影したモノクローム写真を中心に、98点の新作を展示いたします。
70年代初期より荒木は、被写体との極めて私的な関係性を切々と撮影し、今日までの半世紀の間に写真集500冊以上に及ぶ膨大な数の作品を発表してきました。主観的な視点で物語が展開する文学形態である私小説に準え、自らの写真を「私写真」と呼び、「私写真(私小説)こそが写真である」とする態度は、1971年に刊行された実質的な処女写真集『センチメンタルな旅』の序文において写真家自身によって高らかに宣言されて以来、すべての荒木作品に通底しています。
1990年の愛妻・陽子の死後、その作品にはエロス(生/性)とタナトス(死)が表裏一体により色濃く写しとられ、また2000年代後半から自身に降りかかった度重なる病魔や、年月を重ねる中で身体や精神に表れる老いまでもが作品として結実する様は、昨年2017年に国内外の各地で開催された展覧会群でもひろく紹介されました。自らの死を覚悟し、まるで残された時間を惜しむかのように開催したこれらの合計20あまりの個展を通じ、展示した自らの作品から「死から生に向かう」よう励まされ、荒木は今日も精力的に制作を続けています。
本展で展示される作品はすべて、中判モノクロームフィルムで撮影されました。荒木にとってモノクローム写真は元来「死」を象徴していますが、昨年以降、止まっているはずの被写体のうちに微動を感じ、「殺しちゃいけない。写真で撮ることは、最後まで微動して見えなくちゃいけない」と写真家は語っています。また、あくまでもフィルムでの撮影を基本とする姿勢には、荒木が大切にする情(愛情/情け/情緒)は、フィルムの乳剤面でのみ写しとることができるとの確信がうかがえます。「究極の写真はモノクローム」と断言する荒木の最新作を、是非この機会にご高覧ください。
なお、展覧会に合わせまして、写真集『恋夢 愛無』を刊行いたします。
【写真集詳細】
荒木経惟『恋夢 愛無』
タカ・イシイギャラリー(2018年)
発売予定日: 2018年5月25日(金)
販売価格: ¥5,500-(税抜)
ソフト・カバー、80頁、掲載図版98点
詳細はギャラリーへお問い合わせください。
1940年東京都生まれ。千葉大学工学部写真印刷工学科卒業後、電通に入社し写真部に所属する。1964 年、「さっちん」で第 1 回太陽賞を受賞。1971年、妻陽子との新婚旅行を写した『センチメンタルな旅』を限定1000部で自費出版。以降、妖艶な花々、緊縛ヌード、空景、食事、東京の街、飼い猫、様々な被写体から強烈なエロスとタナトスが漂う独特の写真世界を確立し、日本を代表する写真家として内外で高い評価を受ける。おもな個展に「センチメンタルな旅、1971-2017-」東京都写真美術館(東京、2017年)、「Araki」ギメ東洋美術館(パリ、2016年)、「私・生・死 」バービカン・アートギャラリー(ロンドン、2005年)、「Suicide in Tokyo」ジャルディーニ・ディ・カステッロ(ヴェネツィア、2002年)、「Nobuyoshi Araki」ゲント市現代美術館(2000年)、「荒木経惟 センチメンタルな写真、人生」東京都現代美術館(1999年)、「Tokyo Comedy」ウィーン・セセション(1997年)、「荒木経惟・私日記」、カルティエ現代美術財団(パリ、1995年)がある。日本写真協会・年度賞(1990年)、第2回織部賞(1999年)、オーストリア科学・芸術勲章(2008年)、第54回毎日芸術賞・特別賞(2012年)、第 6 回安吾賞(2012年)を受賞。