EXHIBITIONS

尾形一郎 尾形優 「UNMANNED」

会期: 2018年2月24日(土) – 3月31日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム
オープニング・レセプション: 2月24日(土) 18:00 – 20:00

タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムは、2月24日(土)から3月31日(土)まで、尾形一郎 尾形優個展「UNMANNED」を開催いたします。タカ・イシイギャラリーで2度目の個展となる本展では、作家が少年期より収集した世界各国の鉄道模型および建物や工場のプラモデルを用い、縦横無尽に線路が張り巡らされた仮想都市を形成、その緻密に構成された都市の夜の眺めを小型カメラで撮影した2種の映像から成る作品を展示いたします。

作品を作るきっかけとなったのは、世界が資本主義と共産主義に分かれて対峙していた30年前のことです。新婚旅行で共産圏を旅した私たちは、ベルリンの壁やスターリン時代の超高層ビル、商店の存在しない街といった、価値観の転倒した世界の存在に衝撃を受けました。この驚きを、鉄道模型でHOと呼ばれる87分の1スケールのキットを組み合わせて作りました。初代のジオラマが完成した後、自分たちの常識を覆すような異質な街や建物を求めて撮影する旅に出かけます。写真活動と並行して、旅で集めた建築写真のイメージをもとに、東京に新しい家を作り始めていました。「家の中にも、もう一つの小さな都市を作りたい」という妻の提案から、幅2メートル長さ8メートルのジオラマを作ることになります。新しいジオラマは、私たちが育った東京の原風景として、夜のネオン、ビルや工場の光、縦横無尽に走る電車網をイメージしました。そこに、撮影で訪れた街を重ねました。転倒する共産主義の世界、巨大な工場、終着駅、廃屋、団地、ガード下に広がる飾り窓……。走っている車両は世界各国の型で、小学生の頃から長い年月をかけて収集したものです。

2017年12月 尾形一郎 尾形優

走行する機関車からジオラマの街を撮影した具象的な映像と、列車の光のみを追って撮影された抽象的な映像の2本で構成される作品「UNMANNED」は、タイトルが示唆する通り、自動運転の電車、自動放送のアナウンス、車載カメラによる自動撮影という、なるべく人間の手を介さない方法で作られています。

一方の映像では、具象の極みとも言える表現媒体であるジオラマの特色を利用し、走行している列車の編成や建物の細部、人の配置、駅のアナウンスなど一つ一つに意味を持たせることで、形や音に複雑な文化的要素を織り込み、例えば、かつて世界を席巻した国の言語であるポルトガル語やオランダ語を象徴的に用いながら、世界を取り巻く文化の姿を集積しようとする試みが提示されます。対して、音が取り去られたもう一方の映像では、個々の文化的要素が消え去り、全てが光の動きに抽象化され、宇宙の中に投げ出されたような浮遊感、睡眠時や瞑想時のように、現実的な問題が問われる世界とは違う次元が表現されます。

列車が具象空間と抽象空間を走るように、具体化と抽象化を行き来する人間の脳の回路をイメージして制作された2つの映像は、記憶に在るリアリティとフィクションとの狭間へと鑑賞者の意識を誘います。

機材協力 : ソニー ビジュアル プロダクツ株式会社

尾形一郎 尾形優 「UNMANNED」 Trailer
https://vimeo.com/252657761

尾形一郎は京都生まれ、早稲田大学大学院理工学研究科建築計画修了。尾形優は東京生まれ、早稲田大学理工学部建築学科卒業。写真やビデオの撮影と建築やジオラマの制作を交互に繰り返しながら、それらが織りなす異次元的な世界観を発表している。主な写真集・著書に『沖縄彫刻都市』羽鳥書店刊(2015年)、『私たちの「東京の家」』羽鳥書店刊(2014年)、『HOUSE』フォイル刊(2009年)、『ウルトラバロック』新潮社刊(1995年)など。主な建築作品に「東京の家」、「フォトハウス」、最近の展覧会に「沖縄モダニズム」(タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム、2015年)など。

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