EXHIBITIONS

山田正亮

会期: 2018年1月11日(木) – 2月17日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー ニューヨーク

タカ・イシイギャラリー ニューヨークは、1月11日(木)から2月17日(土)まで、山田正亮の個展を開催いたします。戦後の混乱期に画家としてのキャリアをスタートした山田は、以後50年以上にわたり約5,000点の作品を制作しました。山田の活動の変遷を辿ると、画家自身が「記憶から描いた」と述べている静物画の「Still Life」シリーズ(1948-1955年)から始まり、ストライプやクロス、グリッドで構成された「Work」シリーズ(1956-1995年)、そして画面を一色で塗り込める「Color」シリーズ(1997-2001年)の3つの時期にその作品を分類することができます。タカ・イシイギャラリーで初めての個展となる本展では、山田作品の核と言える「Work」シリーズを中心に展示いたします。

活動初期から主に静物画に取り組んだ山田は、東京で3度の空爆を経験し、敗戦後の空虚感の中で、自覚的に死を暗示する静物を主題に選んだ作品群「Still Life」シリーズを制作します。そこに描かれた瓶や器、果物といった対象物は山田の記憶の中で再構成され、徐々に解体、抽象化されていきます。やがて、描かれた対象物の再現的な要素は排除され、絵画全体の単一性へと向かい、平面化を強めていった結果、周囲の空間との溶け合いがピークを迎えた1955年にこのシリーズは終わりを迎え、翌年から「Work」シリーズへと移行していきます。

1995年まで40年間続いた「Work」シリーズの初期の作品は、アラベスク形式の入り組んだ構造をとっていましたが、1958年頃からはストライプやクロス、グリッドで構成された形態へと変化していきます。山田作品で多くみられる色彩のストライプは、山田が1949年から1972年にわたって書き残した、56冊、計2000ページ以上にわたる制作ノート内で、「全色彩」、「色彩の等価性」、「全体性」という言葉で記している概念を具体化した表現です。色彩の線はその個々の存在を主張するよりは寧ろ、相互の本質的な均しさへと向かい、画面に対して平行に、繰り返し描かれることによって、絵画全体としての表現効果を高めています。当初は多色で描かれていたストライプが、1965年頃には2、3色に集約されていくのも、ミニマリズムへの移行としてではなく、山田の志向する絵画表現の概念が作品としてその強度を増した結果であるとみることができます。1978年に東京・銀座の廉画廊で、それまでの20年間の作品を3期に分けて、48点展示したことを契機に作品への評価は大きく変わり、以後毎年のように個展を開催していきます。そして、同じ「Work」シリーズでも画面は大型化し、以前より曖昧になったグリッドの枠組み内には、自由な筆触による生き生きとした表現がみられるようになります。

1995年にこの「Work」シリーズに終止符を打った山田は、1997年からはキャンバスを単色で覆うように描きながらも、画面周縁部分には下層に塗られた別の色彩が覗き、平面でありながら画面の重層性を示した「Color」シリーズへと移行しました。生前の2005年には府中市美術館で1964年までの初期作品を含んだ個展「山田正亮の絵画-〈静物〉から〈Work〉・・・そして〈Color〉へ」、没後6年を経た2016年には油彩画約200点、紙作品約30点と制作ノートを展示した初の回顧展が東京国立近代美術館と京都国立近代美術館で開催されるなど、再評価の試みがなされています。

山田正亮は1929年東京生まれ(2010年没)。東京府立工業高等専門学校を卒業。1949年2月の第1回日本アンデパンダン展に出品。1950年から自由美術家協会展へ参加し、1953年より長谷川三郎に師事。1958年11月に教文館画廊(東京)で初めての個展を開催。1948年から静物画を主題とした「Still Life」シリーズを描きはじめ、その対象は徐々に抽象化され、1956年から 「Work」シリーズを制作。以後40年間描き続けられ、山田作品の根幹をなすこのシリーズは、作品タイトルに、1950年代ではWork B、1960年代ではWork Cというように年代を表すアルファベットと通し番号が機械的にふられており、1990年代のWork Fまで続いた。1978年9月に廉画廊(東京)で開催した個展で高い評価を受け、80年代に入ると60年代のストライプの絵画作品への評価も高まり、1981年には「1960年代-現代美術の転換期」展(東京国立近代美術館、京都国立近代美術館)、1987年には東野芳明がコミッショナーを務めた第19回サンパウロ・ビエンナーレへ参加。1997年からは平面でありながら色相の重層性を描いた「Color」シリーズを制作。主な個展に「endless 山田正亮の絵画」東京国立近代美術館、京都国立近代美術館(2016年)、「山田正亮の絵画-〈静物〉から〈Work〉・・・そして〈Color〉へ」府中市美術館(東京、2005年)など。主なグループ展に「日本美術の20世紀 美術が語るこの100年」東京都現代美術館(2000年)、「Japanese Art After 1945: Scream Against the Sky」横浜美術館、グッゲンハイム美術館、サンフランシスコ近代美術館、イエルバ・ブエナ芸術センター(1994年)など。作品は、東京国立近代美術館、国立国際美術館、京都国立近代美術館、千葉市美術館、横浜美術館、広島市現代美術館などに収蔵されている。

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