EXHIBITIONS

田村尚子/ジェイ・パーカー・ヴァレンタイン

会期:2010年6月25日(金) – 7月31日(土)
オープニング・レセプション:6月25日(金)18:00 – 20:00

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タカ・イシイギャラリー京都は、京都在住のアーティスト田村尚子と、テキサスに生まれ、ニューヨークを拠点に活動するアーティスト、ジェイ・パーカー・ヴァレンタインの京都スペースでの初個展を同時開催致します。田村尚子はこれまでタカ・イシイギャラリー(東京、2004年)とgallery.sora. (東京、2006年)にて展覧会を開催。近年では映画監督の青山真治とコラボレーションしたインスタレーションをVACANT (東京、2009年)にて発表致しました。ヴァレンタインは、Lisa Cooley での個展(ニューヨーク、2008年/ 2010年)に加え、今年度はSupportico Lopez(ベルリン、2010年)での個展も予定されており、 2009年にはミズーリ州のセントルイス現代美術館にて展覧会を開催致しました。

田村尚子は映像やインスタレーション、パフォーマンス等の試みに加え、主に写真をメディアに作品を制作しています。一見したところ彼女の写真作品は大きく二つのカテゴリーに分類されます。すなわち、2004年の初写真集「Voice」青幻舎刊で発表した、場に存在する雰囲気としての抽象作品と、2009年以降、医学雑誌「精神看護」医学書院刊 にて連載する写真シリーズ「ソローニュの森・ラ・ボルド精神病院」で顕される思索的な抽象作品です。 田村の写真表現における抽象性への傾倒は、上記2つのカテゴリーの境界線を文字通り不鮮明なものとしながら、緻密に一貫した(一元的に扱うことには抵抗もありますが)彼女の作品群に表出しています。従って、田村の写真作品にある不気味なほど鮮やかな赤のぼやけ(実際には花々を至近距離で撮影したもの)は、田村の別の作品にある、とある場所が、実はフランスのラ・ボルド精神病院の空間であるということ以上に、明確に抽象的であると同時に異質でもあるのです。田村の最新写真集がフィルムアート社より2010年秋に発売される予定です。

ジェイ・パーカー・ヴァレンタインはポスト・コンセプチュアルの可能性を追求する描画家です。様々なメディアを用いるパーカーの手法は、初歩的でありながらも理知的な「記す」という行為についての考察に要約されます。支持体として彼女が頻繁に使用するMDF (中質繊維板 “Medium Density Fiberboad”)に起因する作品の重量と、作品上に残るドローイングの消し跡により、パーカーの作品はサイト・スペシフィック的要素を内在させています。これらの作品が、それ自体が内包する物語を表出させることなく、何か(ドローイングという行為が)が起こる空間を見事に象徴していることは特筆に値します。 ハイパー・スペシフィック。パーカーの作品は「存在すること」の限界を頑なに提示し、無限後退※に立脚してほんの僅かな美を追い求める、ありふれた現代美術の手法とは決定的に異なります。今回の個展にて発表されるパーカーの作品は、自身初来日でもある一ヶ月間の滞在期間中に制作されます。

※有ることの原因または条件を追求して限りなく遡ること