EXHIBITIONS

今井智己 「Semicircle Law」

会期: 2013年1月26日(土) – 2月16日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム(東京・六本木)
オープニング・レセプション: 2013年1月26日(土)18:00 – 20:00

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タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムは、1月26日(土)から2月16日(土)まで、今井智己個展「Semicircle Law」を開催いたします。本展では、2011年4月21日から2012年末までの約20カ月間、今井が福島第一原子力発電所より30km圏内の複数箇所にて撮影した作品15点を展示いたします。

山頂から白くぼやけた点のように建屋が見えることはあっても、その建屋から大量に放出されたものも、20kmと30kmに引かれた線も見えなかった。変化を蒙ったものはなにも見えない。季節が変わっていくだけで。

 正当な意味で当事者ではない自分は、なにもしなければ他の多くの惨事と同じようにこの惨事をゆっくりと忘れていくだろうと思っていた。忘れるとは慣れること。車を4時間も飛ばせば着く場所に空白の半円があるということに慣れたくはなかった。

 それでもきっと慣れてしまう。

忘却のなだらかな坂を下っていくばかりの僕に写真は、自分が見たものだけではなく、見えなかったことを思いださせてくれる。

今井智己

代表作である『真昼』(青幻舎刊、2001年)や『光と重力』(リトルモア刊、2009年)など、今井は街路や森、部屋といった日常的な風景を写した作品を発表してきました。画面に人が登場しない、静謐な印象すら与えるこれらの作品からは、見ることに真摯に向き合う姿勢や、ありふれた光景に美しさを見いだす今井の静かな興奮が伝わります。近作『A TREE OF NIGHT』(マッチアンドカンパニー刊、2010年)では、見開きの一方のページにスナップ写真を、もう一方に視覚障害者のための点字小説の中から、視覚的・聴覚的な描写がされているページの接写写真を配することによって、見えるが故に私達が犠牲にせざるを得ない感覚を鮮やかに提示し、見ることへの再考を促しました。

政府が原発から半径20km圏内を「警戒区域」に設定し、立ち入り制限を始めた4月22日の前日から、今井は今回の展示作品の撮影を始めました。原発の方角をフレームの中心に据えるという一定のルールに基づいて撮影されたこれらの作品は、原発事故についてのいかなる意見を代弁することなく、ただ、私達がこの未曾有の大事故を「見ているようで実は見ていない」ことを示すかのようです。

【作品集詳細】
今井智己 『Semicircle Law』
販売価格:¥ 3,990-、マッチアンドカンパニー刊(2013年)
ハードカバー、64頁、掲載作品28点、H23 x W28.1 cm
アートディレクション:町口覚
シャーロット・コットン、天野太郎(横浜美術館 主席学芸員)によるエッセイを収録(英語、日本語)