EXHIBITIONS

山元彩香 「We are Made of Grass, Soil, and Trees」

会期: 2018年8月25日(土) – 9月29日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム
オープニング・レセプション: 8月25日(土) 18:00 – 20:00

タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムは、8月25日(土)から9月29日(土)まで、山元彩香個展「We are Made of Grass, Soil, and Trees」を開催いたします。タカ・イシイギャラリーで2度目の個展となる本展では、2014年から2017年にかけて東欧各地で撮影された作品から14点を展示いたします。

– もしこの世に存在するあらゆるものを使って人間を創造することを試みるとすれば、土と木と草で作りたいと思った。

– natureという単語は、自然であり、本性、とも訳される。
  私の本性、人間の存在とは、という大きな問いの前にいつも立ち尽くす。
  真っ白な状態で与えられる名前の奥にある本性を見てみたい。

2018年6月 山元彩香

これまで山元は、言語による意思疎通が難しい異国の地に滞在し、現地で出会った少女たちを被写体に撮影を行なってきました。現地で調達した衣装をあてがいながら、言葉にも満たない音のやり取りや、身振り手振りを交えた身体的感覚によるコミュニケーションを通じて制作されるポートレート作品は、被写体らが日頃纏っている衣服や、その人らしさを構成する固有の人物イメージを取り除くことで立ち現れる、普段は覆い隠された彼女たちの無意識の姿を捉えていると言えます。

本展のタイトル「We are Made of Grass, Soil, and Trees(人は土と木と草からできている)」は、山元が以前に読んだアイヌ神話に着想を得ています。作家が訪れた撮影の地では、現代においても自然と人間との距離が近く、「かつての人間が持っている感受性、言葉を持つ前に信じていたものを今の時代にも見出したい」と語る作家の想いは、言語や知識に頼らず身体的感覚の可能性を信じて被写体と向き合う山元の作品制作の軸となっています。

そうした被写体との対峙と交感を繰り返すなか、被写体を鏡として自分自身を写すような感覚の体験を経て、今作における作家の意識は、眼前の現実に在る被写体と自身とをより深く結びつける行動へと拡がりを見せています。対面する相手の名前の意味や見た夢についてなど、その人の本質に迫るヒントを求めて質問を投げかけながら、山元の眼差しは、一度剥ぎ取った仮面の下に現れた器としての普遍的な存在と、その器に蓄積された、仮面を形づくる様々な要素の連関を読み取ろうとするかのようです。

本展の開催と同時期に、作品集『We are Made of Grass, Soil, and Trees』が刊行されます。
【新刊情報】
山元彩香 『We are Made of Grass, Soil, and Trees』
T&M Projects刊(2018年)
販売価格: ¥6,500-(税抜)
72頁、H28.8 x W26 cm
笠原美智子によるテキスト収録(英語・日本語)
展覧会会場にて先行発売(9月一般発売予定)

山元彩香は1983年神戸市生まれ。2006年に京都精華大学芸術学部造形学科洋画コースを卒業。大学では最初、絵画を専攻するが、次第に自身の身体を使ったパフォーマンス作品や映像作品の制作に移行し、2004年のサンフランシスコへの留学を機に写真の制作を始める。言語によるコミュニケーションが難しい状況のなかでの撮影は、写真というメディアが本質的に抱える性質以上に他者との様々な接点を作家にもたらし、以降、暴力的でありながらも極めて魅力的なイメージ生成の場と言えるポートレートの撮影を続ける。「自分の瞼に蓄積されたイメージでは想像しえない、既知の言葉や知識が通用しない場所」を撮影地に選び、2009年のフィンランド、エストニアでの撮影を皮切りに、エストニア(2010年)、ラトビア(2011、12、14年)、フランス(2012、13年)、ロシア(2014年)、ウクライナ(2015年)、ブルガリア(2016年)、ルーマニア(2017年)と各地で撮影を行ってきた。清里フォトアートミュージアム(山梨県)、Villa Pérochon Centre d’Art Contemporain Photographique(二オール、フランス)に作品が収蔵されている。

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