EXHIBITIONS
山内道雄 「東京」
会期: 2016年10月29日(土) – 11月26日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム
オープニング・レセプション: 10月29日(土) 18:00 – 20:00
タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムは、10月29日(土)から11月26日(土)まで、山内道雄個展「東京」を開催いたします。山内は、森山大道に師事し写真家としての活動を始めた1980年代初頭より、フリーランスの立場で一貫して人や街、その時代を捉え続けてきました。本展では、そのキャリアの最初期より山内が生活と制作の拠点を据える都市、東京のスナップショットより、モノクロ作品及び近作であるカラー作品約22点を展示いたします。
無限に、限りなくかぶさってくるように出会う瞬間の連続から私は体(細胞)が反応するある一瞬をカメラに収める。具体的なものを撮ることで、考えてもよくわからない現実や自然、その一部である自身をわかろうとしているのかもしれない。
山内道雄「後記」『香港1995-1997』shashasha、2015年、n.p.
山内の撮影は、対象となる都市の核とも言うべき界隈を嗅ぎ分け、その路上をひたすら歩く中で行われます。現実の断片に対する自身の身体の感応をそのまま受け止めるように、軽快なフットワークから街やそこを往来する人々に向けシャッターを切る、そうした写真家の「身体を賭した他者との遭遇」の不断の試みによってイメージが獲得されます。
「人は基本的なところはどうしようもなく同じだと思う」と述べる通り、山内が捉えた人々の相貌は、時や場所によって、装い、顔つき、街の空気に差異はあるものの、その眼差しや身振りには時代や国籍・地理の別を超えた類似性を見出すことが出来ます。山内は、こうした「人間の原型」、すなわち表層の説明的な様相ではなく、人が共通に有している内部の形・感情が表出した姿を捉える傍ら、人が育み、翻って人を育みもする街という場のスナップを撮り続け、その一連の作品群は、人の記憶や街の歴史に関するドキュメントとしての魅力も内包しています。
昔の写真を見て、こんなときが確かにあったのだ、と歴史を実感できるのは写真の特長だ。写真の中の人が光がタイムスリップしたかの如く甦り、その場の空気が動き出すような錯覚に陥ると、体がゾクゾクしてきて、いろいろな想いをかきたてられ、黙って見入るしかないような体験をたまにする。
山内道雄「後記」『東京2005-2007』蒼穹舎、2008年、n.p.
90年代初頭より、作家はその撮影範囲をアジアの諸都市へと広げましたが、80年代より取り組んでいる東京のシリーズは、写真家にとってのライフワークであり、原点であり続けています。東京で撮影された新・旧作を織り交ぜた本展を通じ、現実世界への視線を研ぎ澄ませ、自らの生き方を写真に託す山内の、力強く緊張感のあるストリートスナップを是非ご高覧ください。
なお、10月8日(土)から12月25日(日)まで、第35回土門拳賞受賞記念の展覧会が開催予定です。
【同時開催予定の展覧会】
「第35回土門拳賞受賞作品展 山内道雄『DHAKA 2』」
会期: 2016年10月8日(土)- 12月25日(日)
会場: 土門拳記念館 〒998-0055 山形県酒田市飯森山2-13 tel/fax: 0234-31-0028
山内道雄は1950年愛知県生まれ。早稲田大学第二文学部(現、廃部)卒業。1980年、東京写真専門学校(現、東京ビジュアルアーツ)の夜間部に入学。1982年に同校を卒業、イメージショップCAMPに参加し、写真雑誌や自主ギャラリーを中心に写真の発表を精力的に行う。1992年以降、撮影範囲を東京だけではなく上海や香港、ダッカなど、アジアの主要都市へと広げ作品を制作。主な個展に「香港1995-1997」ZEN FOTO GALLERY(東京、2016年)、「東京2009.12.」サードディストリクトギャラリー(東京、2010年)、「CALCUTTA」コニカミノルタフォトプラザ(東京、2004年)、「TOKYO、東京」銀座ニコンサロン(東京、2002年)、「東京1983.2-1986.2」オリンパスギャラリー(東京、1986年)など。主な写真集に『基隆』(グラフィカ編集室刊、2010年)、『東京2005-2007』(蒼穹舎刊、2008年)、『街』(蒼穹舎刊、1992年)、『人へ』(Place M刊、1992年)など。主な受賞に第35回土門拳賞(「DHAKA 2」にて、2015年度)、第20回林忠彦賞(「基隆」にて、2011年)など。作品の主な収蔵先に東京都写真美術館(東京)、周南市美術博物館(山口)など。