EXHIBITIONS
荒木経惟 「机上の楽園」
会期: 2016年9月15日(木) – 10月29日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー パリ
オープニング・レセプション: 9月15日(木)18:00 – 21:00
タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー パリでは、荒木経惟の初個展「机上の楽園」を開催いたします。
要するに、あの世が楽園だっていうこと。少女、天女が犯されてたり、首が転がってたりするだろ?天国ってのはね、いつも言ってるように、天国の中に地獄がないと天国にならないんだよ。
荒木経惟
1960年代以来、荒木経惟は、さまざまな人や物事と彼との間にある私的関係を被写体することによって、「私写真」という新しい写真世界を開拓してきました。
その尽きることのない創造的なエネルギーによって、荒木は人の死を撮り、壊れゆく物を撮り、枯れゆく花を撮り、その一方で生命力に溢れた街やポートレイト、緊縛された女性や妖艶に乱れ咲いた花を撮影しています。彼の写真には、現実と虚構、エロスとタナトス、それら両極の要素が等価に並列されています。その渾然一体をとらえること自体が、写真行為の本質に近づきえることではないかと問いかけているかのようです。「私小説こそもっとも写真に近いと思っている」と語る荒木の写真は、その眼に映るすべてを被写体としながら、被写体を通して彼の心象風景が重なっているように見えます。荒木はそこに立ちあらわれてくるものを「センチメンタル」と呼びました。初期から現在までその主題は終始変わることなく一貫しています。
「楽園」は荒木の重要なモチーフのひとつです。妻陽子の死後、自宅のバルコニーを廃墟の楽園に見立て、そこにオブジェを並べて撮影した「Aノ楽園」(1998年)、東日本大震災直後に、極彩色の花と怪獣のフィギュアを並べて撮影した作品「楽園」(2011年)、女性のヌードとオブジェで構成された「It Was Once a Paradise」(2012年)、人形と枯れかけた花を撮影した「楽園は、モノクローム」(2015年)などが「楽園」シリーズとして発表されてきました。本展にて展示する新作「机上の楽園」は、6 x 7のポジフィルムで撮影した新作のカラー作品23点です。ストーリーを作るのではなく、即物的に、気に入ったものをポンと置いて撮る、というのが今は良いと思っている、と荒木は本作について述べています。移り変わる空を撮影するように、荒木が身近に接している私的なオブジェを日記のように撮影した「机上の楽園」は、衰えては活気づく彼自身の心象を映す絶好のキャンバスなのかもしれません。