EXHIBITIONS

グラシエラ・イトゥルビデ 「グラシエラ・イトゥルビデ 1969 – 1990年」

会期: 2016年4月2日(土) – 5月14日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム

タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムは、4月2日(土)から5月14日(土)まで、グラシエラ・イトゥルビデの個展を開催いたします。本展では、1969年から1990年におもにメキシコで撮影されたヴィンテージ・プリント19点を展示いたします。タカ・イシイギャラリーでは初めての個展となる本展の出品作品には、イトゥルビデの代表的なシリーズである「フチタン、女達の街」が含まれます。

イトゥルビデの作家としてのキャリアは、1969年に映画監督を目指してメキシコ国立自治大学の映画科に入学したことから始まりました。そこで彼女は、メキシコの偉大な写真家のひとり、マヌエル・アルバレス・ブラーヴォと出会い、ブラーヴォはイトゥルビデの才能に深く感銘を受けました。イトゥルビデは1970年から1971年までブラーヴォのアシスタントを務め、彼に同伴してメキシコの先住民族地域へと撮影旅行をしました。こうして、偶然ともいえる機会から、イトゥルビデはカメラとの出会いを果たします。

1970年代、80年代、90年代を通して、イトゥルビデの興味はおもにメキシコに集中し続けました。ブラーヴォやヨゼフ・クーデルカの詩的なスタイル、アンリ・カルティエ=ブレッソンの「決定的瞬間」、そして映画監督ルイス・ブニュエルのシュルレアリスムに深く影響を受けながらも、イトゥルビデは、母国メキシコおよびその他の国々における儀式や日常生活への強い関心にもとづいて、自身が「フォト・エッセイ」と名づける独自のドキュメンタリー写真のスタイルを見出していきました。1979年、メキシコの国立先住民研究所からの依頼によって実現した初めての大きなプロジェクト、「砂漠の民」と題されたシリーズでは、伝統文化と資本主義による近代化の狭間で生活する、ソノラ砂漠に住む先住民族、セリ族の女性達のポートレイトを撮影しました。この写真家としての最初の経験は、イトゥルビデの人生観に大きく影響を与え、フェミニズムへの強い支持を生涯にわたって抱くことになりました。そして同年、画家フランシスコ・トレドの招待により、メキシコ南部のフチタンに住むサポテカ族の撮影を行い、「フチタン、女達の街」と題されたシリーズを制作しました。経済的、政治的に自立し、性の自由を謳歌するサポテカ族の女性達の姿に彼女は深く触発され、同シリーズで最も有名なイメージとして知られる、奇妙な王冠のように売り物のイグアナを頭に乗せて運ぶ女性をとらえた作品「イグアナの聖母」のイメージに象徴されるように、サポテカ族の女性の力強さと威厳を強烈な視覚的強度をもって表現しました。その後、イトゥルビデはおよそ10年間をかけてこのシリーズに取り組みました。1987年には、同シリーズによってユージン・スミス賞を受賞し、1989年には写真集として出版されました。

「私は写真を撮る時、たえずその中に詩的なものを探している」と自身が語るように、イトゥルビデは、都市と農村の生活、伝統と現代、祝祭と死、といった主題に、詩的な感性をこめて被写体を撮影します。本展を通じて、写真家・グラシエラ・イトゥルビデの重要な軌跡の一端を是非ご高覧ください。

グラシエラ・イトゥルビデは1942年メキシコ・シティ生まれ、同所を拠点に活動。1969年から1972年にメキシコ国立自治大学映画科にて映画および写真を学ぶ。代表的な個展として、テート・モダン(ロンドン、2013年)、フリーダ・カーロ美術館(メキシコ・シティ、2012年)、バービカン・アートギャラリー(ロンドン、2012年)、メキシコ近代美術館(メキシコ・シティ、2011年)、MAPFRE ファウンデーション(マドリード、2009年)、ヴィンタートゥール写真美術館(ヴィンタートゥール、2009年)、アメリカス・ソサエティ(ニューヨーク、2008年)、J・ポール・ゲティ美術館(ロサンゼルス、2007年)、リオデジャネイロ近代美術館(1993年)、サンフランシスコ近代美術館(1990年)、ポンピドゥー・センター (パリ、1982年)などが挙げられる。おもな受賞に、インフィニティ賞コーネル・キャパ生涯功績部門(2015年)、ルーシー賞(2010年)、メキシコ市芸術科学国家賞(2009年)、ハッセルブラッド国際写真賞(2008年)、レガシー賞(2007年)、ヒューゴ・エアフルト賞(1989年)、グッゲンハイム・フェローシップ(1988年)などがある。

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