EXHIBITIONS

村上華子 「ANTICAMERA (OF THE EYE)」

会期: 2016年4月9日(土) – 5月7日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー 東京
作家来日オープニング・レセプション: 4月9日(土)18:00 – 20:00

タカ・イシイギャラリーは、 4月9日(土)から5月7日(土)まで、村上華子個展「ANTICAMERA (OF THE EYE)」を開催いたします。タカ・イシイギャラリーでの初の個展となる本展では、黎明期のカラー写真であるオートクロームから着想を得た新作を展示いたします。

 あらゆる写真は網膜であるかもしれない。それがいつの時代であれ、どこかで、誰かの網膜に映った光景、あるいはその断片である。それは一枚の紙片であったり、銀メッキした銅版、あるいはガラス板、フィルム、さらには電子媒体でもあり得る。だがそのいずれも、一度網膜に映り、そして消えたものの物質化である。
 橙色の光が射し込む。網膜が世界と衝突し、距離は完全に零になる。あるいは、衝突したのは世界のほうかもしれない。ともあれ、そこですべての距離は消えた。アンチカメラ。まぶたと網膜の間で、時が宙吊りになった。

2016年2月 村上華子

村上華子の作品の多くは、これまでも写真の古典技法や活版印刷術など、過去のものとされるメディアに焦点をあてた緻密なリサーチに基づいてきました。各作品には、複製技術の起源に関する逸話や村上自身の経験から語られるテキストが添えられ、虚と実、過去の史実と現在の仮説が錯綜する状況が作品の中に生まれています。ダゲレオタイプによる作品『APPRITION (OF THE SUN)』は、インターネットで「太陽」と検索したときに現れるイメージをダゲレオタイプとして再生産した作品です。世界で初めて商業化された写真技術であるダゲレオタイプが流通していた19世紀半ばではあり得ない、黒点やフレアの様子までもが映り込んでいるこの作品は、現代と過去の技法が交差する、いわばイメージの変種として提示されています。この作品には、デジタルデータとして無限に複製することが可能になった写真を「歴史上の先祖に送り返そう」とする作家の意図が表れていると同時に、写真や映画が本質的にはらむ虚実性を浮き彫りにし、メディアの終わりと始まりが併存しループする磁場のような様相を帯びています。

最初期にリュミエール兄弟により発明されたカラー写真法であるオートクロームは、「赤・青・緑」の三色に着色したジャガイモのデンプンを利用したものでした。その粒子は、村上にポスト印象主義の点描絵画からデジタルカメラの撮像素子、デジタル写真のピクセル、そして網膜の視覚細胞を想起させました。およそ一世紀前に作られてから未使用のままであったオートクロームの乾板を現像し、引き伸ばして制作された『ANTICAMERA (OF THE EYE) #P』には、まさにそれらを貫く形態をみることができます。村上は、オートクロームの板を網膜のアナロジーととらえ、「イメージが通過する空間」と述べています。見ることの仕組みそのものに迫りつつ、真実とフィクションを往来しながら制作される村上華子の作品をぜひ、この機会にご高覧ください。

村上華子は1984年生まれ。東京大学文学部卒業後、東京藝術大学映像研究科修士課程修了。その後ベルギー政府奨学生として渡欧し、ポーラ美術振興財団在外研修(パリ)、ル・フレノワ: フランス国立現代アートスタジオを経て現在フランスを拠点に活動しています。主なグループ展として「資本空間-スリー・ディメンショナル・ロジカル・ピクチャーの彼岸: 村上華子」gallery αM(東京、2015年)、「パノラマ17」ル・フレノワ: フランス国立現代アートスタジオ(トゥルコワン、2015年)、「日常の実践」国際芸術センター青森(2011年)、「トーキョーストーリー」トーキョーワンダーサイト(2010年)、「大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ」(新潟、2009年)などが挙げられます。

オープニング・レセプションに合わせて作家がパリより来日いたします。ご多忙の折とは存じますが、万障お繰り合わせのうえご参加くださいますようご案内申し上げます。

【作品集詳細】
『ANTICAMERA (OF THE EYE)』 タカ・イシイギャラリー刊(2016年)
販売価格:¥3,500- (税抜)、ソフト・カバー、48頁、掲載作品12点、H 210 x W 148 mm

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