EXHIBITIONS

渡辺克巳

会期: 2014年8月23日(土) – 9月13日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム(東京・六本木AXISビル)

タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムは、2014年8月23日(土)から9月13日(土)まで、渡辺克巳展を開催いたします。本展では、長年に渡って渡辺克巳が撮り続けた新宿の作品シリーズから14点の作品を展示いたします。

渡辺克巳は、「流しの写真屋」として1960年代の後半から70年代の初頭まで、新宿を舞台に水商売の女性やゲイボーイ、ヤクザなど、そこを行き交い、そこで商売をする様々な人々を写真に収めてきました。「流しの写真屋」とは、カメラを片手に新宿を歩き、頼まれれば被写体の姿をカメラに収め、現像・プリントを行って翌日には写真を届けるということを稼業にする、当時においても特異な存在だったと言えます。渡辺によって撮影された人々は、新宿を舞台に生きる各々の姿を、自信を持って知らしめるように、様々なポーズを取ってカメラの前に立っています。なかには、それらの写真を郷里に送り、自身の近況報告にかえるということもあったようで、被写体たちにとっても、貴重な写真であったことをうかがい知ることができます。

70年代以降、安価な自動露出カメラが普及しはじめると、より多くの人々がカメラを持つようになり、仕事として「流しの写真屋」を続けていくことは困難になります。しかし、それ以降も渡辺は、新宿という街、そこに生きる人々を被写体に、膨大な数の作品を制作し続けました。人々のポートレートの他にも、コマ劇場前の騒乱から路地裏で遊ぶ子供たち、空き缶が山のように集積する場所まで、新宿中をくまなく捉え続ける写真家は、移りゆく新宿の姿を記録し続ける観察者として、その街に寄り添い続けてきました。

渡辺克巳は、1941年岩手県盛岡市生まれ(2006年逝去)。定時制だった岩手県立盛岡第一高等学校に通う傍ら、毎日新聞盛岡支局にて事務補助員を務め、その間に写真の魅力を知ります。高校を卒業して上京した後は、東條会館写真部に勤務し、スタジオ撮影の技術を身に付けました。その後、1965年から新宿で手札1組200円のポートレート写真の請負を稼業にする「流しの写真屋」を始め、多くの人々、場所を撮影し続けました。1973年には写真集『新宿群盗伝66/73』を上梓。74年には東京国立近代美術館で開催された「十五人の写真家」展にも出展し、作品への評価も高まります。「流しの写真屋」を辞めて以降は、焼き芋屋や写真館経営なども経験しながら、フリーランスの写真家へと転身。国内外を問わず、各地に撮影へ出掛けますが、その間も一貫して新宿を撮影し続けています。

渡辺克巳のライフワークとなった新宿の初期作品群を、この機会に是非ご高覧ください。

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