VIEWING ROOM

Issue #01|Cerith Wyn Evans|Spatial Intervention

タカ・イシイギャラリー(以下TIG) —— あなたはイサム・ノグチの作品や、土門拳撮影による勅使河原蒼風の作品を引用した「Spatial Intervention」シリーズを制作されていますが、これらの作家の作品にはどのような魅力があるのでしょうか?どこに惹かれるのでしょうか?

ケリス・ウィン・エヴァンス(以下CWE) —— イサム・ノグチ、土門拳、勅使河原蒼風。これら三人の作家の「三位一体」と、彼らのメディアをまたいだコラボレーションは、私にとって、空間から場所へ、時間を経て続く糸のような軌跡に見えます…。トランスファレンス(転移)、コンポジション、彫刻、写真、シンタックス(構文)、いけばな、プレゼンス、フレーミング、時間性、建築、ボリューム、ヴォイド(虚空)、ドキュメンテーション、本と影、印刷と光。そこでは広大な領域についての言説が繰り広げられます。その領域は、一旦立ち止まり、これらの事項の関係性を考察し、その余韻を楽しむ機会をうながす場です。ある意味、三人の作家はそれぞれ、相関関係の有り様を、そして引用する喜びを私に教えてくれました。

Photo: Kenji Takahashi

TIG —— これまでの活動の中で、インスタレーションや立体作品を数多く制作されてきましたが、近年、平面作品の制作に取り組むようになったのはなぜですか?

CWE —— フラットな平面にこだわっているように見えるとしたら、それは画面への問いかけに関わっているような気がします。「内在」の平面性。想像するに、私は二次元、三次元など異なる「音域」の間の境界を解体することを切望し、戦っているのでしょう。私は一般的な平面ではない多様な平面、多様な次元と遭遇する可能性を惹起したいのです。私達の視覚的欲望が、降霊術により幽体を呼び寄せるように。

TIG —— あなたの作品のなかには、理解の向こう側にあるものー異質さ、不理解、ミステリアスな要素が詩的な形式で繰り返しあらわれるように感じます。それはあなたの美学に関連していますか?

CWE —— (Sight[視覚]、Site[場]、Cite[引用])の渦、もしくは「はい!」の一言です。

Photo: Kenji Takahashi

ABOUT

「Spatial Intervention」は、ウィン・エヴァンスが2015年から制作を続けているシリーズ作品です。それぞれの作品にはイサム・ノグチ、ドナルド・キーン、そして戦後前衛いけばなを主導し、いけばな草月流を創設した勅使河原蒼風の作品集の図版のページが使用されており、どの作品にも真円の穴が開けられています。勅使河原蒼風の作品集(『私の花』1966年)の掲載写真は勅使河原の盟友であり、戦後日本写真会においてリアリズム写真を提唱した土門拳が撮影しています。ウィン・エヴァンスは、自身もたびたび語るように、日本の伝統文化、とりわけ14世紀に大成された古典演劇である能に魅了されています。そして、12年前の来日時に訪れ、衝撃を受けたというイサム・ノグチによる石庭『天国』(草月会館)を舞台として2018年に個展を開催した際には、草月流のいけばなに共鳴したと述べています。これらの作品において見られる、写真に「窓」を開けるというシンプルな行為は、イメージとそれを物理的な物体として成立させる支持体との関係、それらの相互作用、エネルギーの回路を視覚化します。ウィン・エヴァンスの試みは、目に見える領域と目に見えない領域、それらの層を重ね、瞑想のようにそれらについてそれぞれが思考し、夢見るための場所をつくりだすことなのです。

ケリス・ウィン・エヴァンスの作品には、視覚的、聴覚的、概念的なものを問わず、数多くの参照と引用が用いられてきました。それらには美術、映画、演劇、詩、哲学、歴史、そして天文学や物理学をはじめとする科学からの言及が多く含まれ、作品の内側で複雑に、横断的に重ね合わされています。ウィン・エヴァンスは、洗練された美意識とともに複数のメディアを組み合わせたインスタレーションを触媒として、既存の文脈や歴史のなかで展開される意味を問い直し、翻訳し、転置し、脱文脈化し、物質的なものと非物質的なものの間に隠蔽されている知覚の境界線を押し広げることに挑戦しています。私たちの認知能力というものは何か、またその意味をどのように組立てていくのかについて問いかけるのです。

INFORMATION

国内美術館での初個展として、ポーラ美術館にてアトリウムギャラリーほかを会場とする展覧会が開催されます。代表的なネオン作品から指向性スピーカーを用いた音の作品、「Spatial Intervention」シリーズ作品など、作家の活動を俯瞰する展覧会となります。

ケリス・ウィン・エヴァンス展
4月23日[木]* — 11月3日[火・祝]
ポーラ美術館(箱根)
https://www.polamuseum.or.jp/cerith/

* 緊急事態宣言解除に伴い6月7日開幕。
同時開催の「モネとマティス もうひとつの楽園」展は6月1日開幕。

Photo: Ken Kato. Installation view: Pola Museum of Art, Hakone, Japan, 2020.

BIOGRAPHY

Cerith Wyn Evans
——
ケリス・ウィン・エヴァンスは1958年ウェールズのスラネリ生まれ。現在ロンドンを拠点に活動。主な個展として、ピレリ・ハンガービコッカ(ミラノ、2019年)、タマヨ美術館(メキシコ・シティ、2018年)、テート・ブリテン・コミッション(ロンドン、2017年)、Museum Haus Konstruktiv(チューリッヒ、2017年)、Museion(ボルツァーノ、イタリア、2015年)、サーペンタイン・サックラー・ギャラリー(ロンドン、2014年)、Bergen Kunsthall(ベルゲン、ノルウェー、2011年)、バラガン邸(メキシコ・シティ、2010年)、カスティーリャ・イ・レオン現代美術館(2008年)、パリ市立近代美術館(2006年)などが挙げられる。主なグループ展として、ミュンスター彫刻プロジェクト(2017年)、ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展(2017年)、モスクワ・ビエンナーレ(2011年)、愛知トリエンナーレ(名古屋、2010年)、「万華鏡の視覚:ティッセン・ボルネミッッサ現代美術財団コレクションより」森美術館(東京、2009年)、横浜トリエンナーレ(2008年)、イスタンブール・ビエンナーレ(2005年)、ウェールズ代表として参加したヴェチア・ビエンナーレ国際美術展(2003年)などに参加している。


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