EXHIBITIONS
ローマン・オンダック 「Breath on Both Sides」
会期: 2025年11月14日(金) – 12月27日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー 京都
オープニング・レセプション: 11月14日(金)15:30 – 17:30
タカ・イシイギャラリー 京都は、2025年11月14日から12月27日まで、スロバキアのアーティスト、ローマン・オンダックによる個展「Breath on Both Sides」を開催いたします。本展は、2004年の現代美術センター・CCA北九州での個展に続き、オンダックにとって日本での二度目の個展となります。また、オンダックの作品は、本展と同時期に開催されるArt Collaboration Kyoto (ACK)におけるタカ・イシイギャラリーとGalerie Martin Jandaのブースでも展示されます。
ローマン・オンダックは、日常における習慣的行為に繊細な介入を行うコンセプチュアル・アーティストです。その手法は、旧チェコスロバキアの共産主義時代における幼少期の経験と、民主主義国家への変革が始まってから続く社会的・政治的変化に対する観察とによってかたちづくられています。オンダックは、人類学的探究心に基づき、社会構造と日常生活を探求するインスタレーションや彫刻作品を制作します。参加型のパフォーマンスでは、観客と作品との相互作用を促し、日常的な体験を時間、存在、集団的行動についての詩的な考察へと変容させます。オンダックは、その作品を通じて思考を刺激するような状況を作り出し、意味が社会的に構築される過程を明らかにします。そうすることで、人々が共有する環境において自らの役割を再考するよう観客を誘うのです。
本展で展示される作品は、ブラチスラヴァにある作家のアトリエや自宅など、身近な環境から抽出した要素で構成されています。それらは変換され、解体され、再構成された後、本来の用途とは異なるかたちで展示空間に配置されます。遠く離れた土地から持ち込まれたこれらのオブジェは、日本の伝統的な町家の中で新たな文脈を与えられ、あるものは元々そこにあったかのように溶け込み、またあるものは機能性を剥奪された異質な存在として、なぜそれらがここにあるのかという疑問を鑑賞者に投げかけます。そのいずれの場合にも、個人の経験や記憶が―作家とその生活環境が経てきた歴史をそこに持ち込みながら―こうした物質的な介入を経るとき、新たな物語を生み出す可能性が生まれます。《Swapped Roles(交換された役割)》や《Sitting Door(座る扉)》といった示唆に富む作品タイトルも、ある種のユーモアを帯びつつこうした行為を促しています。
展覧会タイトル「Breath on Both Sides」は、ギャラリー内外を隔てるガラス窓に配置された一つの風船からなる作品に由来します。風船内の空気は内外の関係を曖昧にし、庭園を中心に据え京都の気候に合わせ開口部を設けた歴史的建築と共鳴しているかのようです。この作品はまた、息—生気を吹き込む行為—によって作り出され、物理的にここには存在しない他者の存在へと私たちの意識を向けます。こうした視線は、壁面に展示される《Message》と題された一連のポストカードにも向けられています。それらのほとんどは黒いアクリル絵具の層に覆われ、部分的な情報しか読み取れません。これらはどのような旅路を経てここにたどり着いたのでしょうか?オンダックのこれらの作品は、長い年月のあいだ世代を越えて歴史と集合的記憶を紡いできた人々の存在へと、私たちの意識を再び引き戻すのです。
ローマン・オンダックは1966年に旧チェコスロバキアのジリナに生まれ、現在スロバキアのブラチスラヴァを拠点に活動。ブラチスラヴァ美術アカデミー(1988-94年)とスリッパリー・ロック大学(1993年)で絵画を学ぶ。主な個展に、クンストハレ・プラハ(2025年)、テート・モダン(ロンドン、2025年)、アントニ・タピエス財団美術館(バルセロナ、2023年)、サウスロンドン・ギャラリー(2016年)、広東時代美術館(広州、2015年)、ソフィア王妃芸術センター(マドリード、2013年)、パリ市立近代美術館(2012年)、ドイツ・グッゲンハイム美術館(ベルリン、2012年)、クンストハウス・チューリッヒ(2011年)、タマヨ美術館(メキシコ・シティ、2011年)、ニューヨーク近代美術館(2009年)、ピナコテーク・デア・モデルネ(2007年)、CCA北九州(2004年)など。
近年の主なグループ展として、「Fragment of an Infinite Discourse」レンバッハハウス美術館(ミュンヘン、2023年)、「The Paradox of Stillness: Art, Object, and Performance」ウォーカー・アート・センター(ミネアポリス、2021年)、「Keeping the Balance」ルートヴィヒ美術館(ブダペスト、2020年)、「Shutters and Stairs. Elements of Modern Architecture in Contemporary Art」、イスラエル博物館(エルサレム、2020年)、「MoMA at NGV: 130 Years of Modern and Contemporary Art」ビクトリア国立美術館(メルボルン、2018年)、「I AM THE MOUTH」ザグレブ現代美術館(2018年)、「Experiencia infinita」アルゼンチン国立美術館(ブエノスアイレス、2015年)など。ダッカ・アート・サミット(2023年)、国際芸術祭「あいち2022」(愛知、2022年)、第10回光州ビエンナーレ(2014年)、ドクメンタ13(カッセル、2012年)、第54・53・50回ヴェネチア・ビエンナーレ(2011年・2009年・2003年)、第6回ベルリン・ビエンナーレ(2010年)、第7回上海ビエンナーレ(2008年)、第27回サンパウロ・ビエンナーレ(2006年)、マニフェスタ3(リュブリャナ、2000年)、マニフェスタ1(ロッテルダム、1996年)ほか国際展にも数多く参加している。



