EXHIBITIONS

宮本隆司 「建築の黙示録」

会期: 2019年5月11日(土) – 6月15日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム
オープニング・レセプション: 5月18日(土) 18:00 – 20:00

タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムは、5月11日(土)から6月15日(土)まで、宮本隆司個展「建築の黙示録」を開催いたします。タカ・イシイギャラリーで2度目の個展となる本展では、1989年に第14回木村伊兵衛写真賞を受賞した宮本の代表的なシリーズの一つである「建築の黙示録」より、約20点を展示いたします。

写真を成立させるものは光と闇と感光材である。写真がデジタル化するしないにかかわらず、この原則は変わらないと思う。レンズやピンホールを通過した光が闇の空間に置かれた感光材に映像を結像させ、世界像を定着し固定化する。撮影とは闇の中で光と感光材を出会わせることである。さらに深まる都市の背後の闇の中で、光と感光材の出会いが増大することはあっても無くなることはないと思う。

宮本隆司、「序」、『新・建築の黙示録』平凡社、2003年、p. 5

1977年に初個展を開催した後、建築雑誌やグラフ誌での仕事を続けながら、写真家として自身の方向性を模索していた宮本は、1983年、中野刑務所解体現場に衝撃を受け、以後半年に亘り解体過程を撮影しました。内と外の境界が消滅し変質した空間に漏れ入る光の痕跡を像として定着させた作品は、建物が使用目的や意味体系から解放され、それ自身として存在している様を捉えています。雑誌の取材で赴いたドイツにて遭遇したベルリン大劇場の解体や、壊すことを前提に作られた建物としてのつくば科学万博パヴィリオン、劇場や競馬場、映画館の解体――「「もの」としての建築の本質」を探求し、変貌する都市と建築を凝視した作品群は、まず1983年から86年の4年間に撮影された作品をまとめる形で86年に個展「建築の黙示録」で発表され、その後88年に同名の作品集として出版されました。都市のモダニティの構成要素であった建築物の終焉を撮影するという行為の批評性と、喪失と再生にまつわる物語を語るよりはむしろ解体による空間の変質そのものを正面から捉えた作品群は大きな反響を呼び、89年に展示及び出版した「九龍城砦」シリーズと合わせて木村伊兵衛写真賞を受賞しました。

都市と建築の内包する諸問題への作家独自の視点は、「建築の黙示録」から、香港の高層スラム建築を撮影した「九龍城砦」、阪神淡路大震災の被災地を捉えた「神戸 1995」、バブル崩壊後に急増したホームレスの住居を巡る「ダンボールの家」へと、宮本の作品世界における大きな流れの一つを形作っています。

【同時期に開催予定の展覧会】
宮本隆司 「いまだ見えざるところ」
会期: 2019年5月14日(火)-7月15日(月)
会場: 東京都写真美術館
  〒153-0062 東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内 tel: 03-3280-0099
休館日: 毎週月曜日(ただし、7月15日(月・祝)は開館)
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宮本隆司は1947年東京都生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業後、建築雑誌の編集部員を経て写真家として独立。建築物を中心に、都市の変貌・崩壊と再生の光景を独自の視線で撮影。建築解体現場を撮影した「建築の黙示録」(1986年)や香港の高層スラムを撮った「九龍城砦」(1988年)など、その作品は国内外において高い評価を受けている。主な個展に「宮本隆司写真展」世田谷美術館(東京、2004年)、「Urban Apocalypse」Künstlerhaus Bethanien(ベルリン、1999年)、「KOBE 1995 After the Earthquake+」Museum für Moderne Kunst Frankfurt(フランクフルト、1999年)、「建築の黙示録」ヒルサイドギャラリー(東京、1986年)等。主な受賞に第55回芸術選奨文部科学大臣賞(世田谷美術館個展により、2005年)、第6回ヴェネツィア・ビエンナーレ建築展金獅子賞(「KOBE 1995 After the Earthquake」展示により、1996年)、第14回木村伊兵衛賞(作品集『建築の黙示録』『九龍城砦』及び「九龍城砦」展示により、1989年)など。作品の主な収蔵先にSan Francisco Museum of Modern Art(サンフランシスコ)、Deutschen Centrum für Photographie(ベルリン)、東京国立近代美術館(東京)など。

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