EXHIBITIONS
桂ゆき
会期: 2018年9月7日（金） – 10月27日（土）
会場: タカ・イシイギャラリー ニューヨーク
オープニング・レセプション: 9月14日（金）18:00-20:00
タカ・イシイギャラリー ニューヨークは、9月7日（金）から10月 27 日（土）まで、桂ゆき個展を開催いたします。桂は1930年代から90年代初頭にかけて、細密描写・コラージュ・戯画的表現を軸に、既成の枠に捉われない自由な制作を持続的に展開し、日本の戦前戦後の前衛芸術を繋ぐ稀有な女性芸術家の一人として知られています。タカ・イシイギャラリー ニューヨークでの初個展となる本展では、活動初期に制作された油彩画や、1940年代後半に発表された作品の他、50年代後半から60年代初めのアメリカ滞在時に制作した作品を含む計5点を展示いたします。
1926年、女学校に入学した桂ゆきは、西洋画に強い関心を抱きながらも、両親の勧めで池上秀畝のもと日本画の手習いを始めます。緻密な観察から身近な動植物を克明に描写する試みは、並行して描いていた水彩画にも見受けられ、後に手掛ける油画制作の礎を築きました。女学校を卒業後、漸く油絵の具を入手し西洋絵画の基礎を身につけるも、アカデミックな絵画学習に飽き足らなくなった桂は、1933年から東郷青児や藤田嗣治が指導するアヴァンガルド洋画研究所に通い始めます。活動初期の桂にとって細密表現と並ぶ表現の柱であったコラージュを用いた作品は、フランスから帰国した海老原喜之助の目に留まり、彼の勧めで1935年に東京・銀座にて初個展を開催しました。物質の表面に対する関心から出発し、自身の触覚に従って制作された抽象的なコラージュ作品は、時に戯画的表現と結びつき、作家独自の切り口で時代を視覚化しています。以後、1938年に藤田嗣治の勧めで再び個展を開き、同年には吉原治良、山口長男らとともに二科九室会に参加するなど、桂は前衛女性芸術家のパイオニアと評されています。
1940年代後半から50年代にかけて、桂は多くの展覧会で油彩画を精力的に発表していくとともに、児童書の装丁や挿画を数多く手掛け、物語の世界へと接近していくようになります。戦後混乱期における価値観の多様化と相対化のなかで、桂は作品を通して寓意性を含んだ新たな社会風刺的表現を展開しました。その後、1956年からはパリを拠点にヨーロッパ各地へ周遊、現地の様々な作家と交流し、中央アフリカでの滞在を経て1958年よりニューヨークへ渡ります。米国滞在時には、皺をつけた和紙をキャンバスにコラージュし、その上から着彩した独特な平面作品を制作するなど、この時期の作品では油絵具が物質として際立ち、作家が滞在中に触れた抽象表現主義やネオダダ作品の影響を垣間見ることができます。1961年の帰国後も「ゴンベとカラス」（1966年）による現代日本美術展最優秀賞受賞をはじめ、海外旅行記を綴った著書が毎日出版文化賞を受賞するなど、桂の活躍は多岐にわたり、紅絹を用いた創作を発表する晩年まで、常に既成概念を踏み破る作品を制作し続けました。
桂ゆきは1913年東京生まれ（1991年没）。本名雪子。初めは「ユキ子」、戦後1970年頃から「ゆき」と称する。古賀春江、東郷青児らのアヴァンガルド洋画研究所で斎藤義重らと知り合い、藤田嗣治の指導も受ける。1935年にコラージュによる初個展を開催以来、60年にわたり創作活動を行なう。1938年、吉原治良に誘われて、山口長男、広幡憲らとともに、二科九室会に参加。戦時中の1943年には、女流美術家奉公隊、戦後の1946年には女流画家協会の設立に参加するなど、戦前戦後を結ぶ重要な前衛女性作家の先駆者として活動を展開した。1956年9月に渡仏し、1961年春に帰国するまで、ヨーロッパ、アフリカ奥地、アメリカ等に滞在し、イヴ・クライン、ジャン・コクトー、サム・フランシス、草間彌生らと交流。特にアメリカ滞在中は、皺をつけた和紙をコラージュした抽象表現主義的な独自の作品を制作している。帰国後は1966年に「第7回現代日本美術展」最優秀賞を受賞。コラージュの手法を駆使しながら、時にユーモアを交え常に新しい様式を開拓し、個展や多くの美術館のグループ展に出品。主な個展に「生誕100年 桂ゆき―ある寓話―」東京都現代美術館、下関市立美術館（2013年）、「桂ゆき展―コラージュとユーモアの女性画家―」一宮市三岸節子記念美術館（2007年）、「桂ゆきの世界展―絵画とコラージュに見る女性画家のまなざし―」茨城県近代美術館（1998年）、「桂ゆき展」下関市立美術館（1991年）など。主な作品収蔵先にThe University of Arizona Museum of Art、神奈川県立近代美術館、大原美術館、板橋市美術館、東京都現代美術館、横浜美術館など。
